「このプロジェクトは、誰もが知っていて、愛されているクラシックな楽曲をテーマにしたの」と、ミシェル・ンデゲオチェロは自身の印象的な新作『シノニム』について語る。ベースを主たる楽器とする多才なアーティストであるンデゲオチェロは、マルチ・インストゥルメンタリストであり、ソングライター、シンガー、プロデューサー、そしてコンセプチュアリストでもある。彼女には明確なヴィジョンがある。「楽曲はさまざまなトーンを持ち、異なるジャンルと、意図的に選び取られたグルーヴを表現しているの。でも、このアルバムは同時に、喜び、自分自身であること、個人としての自己表現、そして普遍的な体験についての作品でもあるわ」と彼女は説明する。

Meshell Ndegeocello - Synonym

ミシェル・ンデゲオチェロ シノニム

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カヴァー・アルバムを真に成立させるには、ンデゲオチェロほど個性的な音楽家でなければ成し得ない。彼女は豊かな想像力の持ち主であり、自ら築き上げたオルタナティヴR&Bの領域、そしてその先にある音楽からも幅広く影響を汲み取っている。その豊かな想像力によって、これまで互いに何の繋がりもなかった15曲をひとつに繋ぎ合わせ、それらをあたかも自身のディスコグラフィーに元々存在していた作品であるかのように、ひとつの統一された音楽として響かせているのである。楽曲は元々の形から完全に姿を変えており、その結果、誰もが知る象徴的な歌詞やメロディーでさえ、まるで初めて出会ったかのように聴くことができる。

ンデゲオチェロは、本作に命を吹き込むにあたり、かつてのコラボレーターに協力を求めた。彼女の初期の2枚の名盤、『プランテーション・ララバイ』(1993年)と『ピース・ビヨンド・パッション』(1996年)をプロデュースしたデヴィッド・ギャムソンである。エイブ・ラウンズと共に、この3人で『シノニム』を共同プロデュースし、ンデゲオチェロが一貫してコラボレーションを重視してきた姿勢を、さらに記録することとなった。彼女がいつも強調しているように、ミシェル・ンデゲオチェロは「バンド」なのである。

今回、その彼女が語る「バンド」を構成するのは、現代音楽シーンにおいて最も大きな影響力を持つ声の持ち主たちである。先行シングルとして発表された、ジョージ・マイケルとアレサ・フランクリンの名曲「愛のおとずれ」のカヴァーでは、圧倒的な歌唱力を持つシンシア・エリヴォが参加している。ンデゲオチェロとエリヴォによるこのヴァージョンは、歌唱力を誇示するようなものではない。むしろ、キャラメルのように甘くまろやかなR&Bのトーンによる繊細な解釈を聴かせるものであり、抑制が効いていて洗練されている。

ヒューマン・リーグの「愛の残り火」は、原曲とはほとんど見分けがつかないほど大胆に姿を変えている。ダブやレゲエからヒントを得たサウンドに、アメリカのシンガー・ソングライター、キャット・パワーが加わり、彼女の歌声はどこかエーテル的な響きを帯びている。ボブ・ディランが1964年に発表した「悲しきベイブ」もまた、メロディーにひねりを加えることで、容易には原曲だと判別できない仕上がりとなっている。シンガー・ソングライターのマディソン・カニングハムを迎え、新たな姿へと生まれ変わったこのヴァージョンは、原曲が持つフォークとロックのルーツをしっかりと受け継いでいる。

メシェル・ンデゲオチェロ
メシェル・ンデゲオチェロ。写真:チャーリー・グロス。

ここまで聴けばすでに明らかかもしれないが、このアルバムはジャンルの制約をものともせず、実に広大な音楽的領域を横断している。ンデゲオチェロは、1960年代のフォーク、1970年代のソウル、1980年代のR&B、1990年代のオルタナティヴ・ロック、2000年代のヒップホップから楽曲を取り上げ、それらにカントリーやポップ、さらにはその先にある音楽までを加えてカヴァーしている。リアーナ(オリジナル:ヤーブロウ&ピープルズ)の「ドント・ストップ・ザ・ミュージック」をカントリー風に仕立てたヴァージョンと、ソニー&シェールの「アイ・ガット・ユー・ベイブ」が、これまで同じひとつのプロジェクトでカヴァーされたことなど、恐らく一度もなかったのではないだろうか。

新鮮で大胆なのは、ンデゲオチェロが、これまで何度も再解釈されてきた定番曲や名曲ばかりが並ぶお決まりの選曲をしていないことである。たとえばジャ・ルールの「オールウェイズ・オン・タイム」は完全に姿を変え、クルアンビンのローラ・リーを迎えることで、フルートとシンセサイザーが彩る、居心地の良いインディー・ナンバーへと花開いている。

ンデゲオチェロがこの15曲を再解釈するアプローチには、ジェンダーとクィア・アイデンティティという視点も通底している。本作のデュエットは、同じジェンダーを自認する者同士によって歌われており、私たちが慣れ親しんできた時代遅れの「規範」に異議を唱えている。アルバムについてンデゲオチェロはこう語っている。「願わくば、そこが際立って聴こえてほしいと思っているわ。つまり、みんなが音楽的にとても相性がよく、お互いを引き立て合っているということをね。ただし、私は何かを定義しようとはしていないの。なぜなら、定義されていない状態にこそ、私は最も自由を感じるから」

1990年代初頭、バイセクシュアルの女性であることを公にした彼女は、長年のキャリアを通じて、クィアのファンにとって貴重な可視性を提供してきた。『シノニム』は、その流れを受け継ぐ作品でもある。「このプロジェクトは、あらゆる種類の解放の同義語としての、クィア・リベレーションの表現なの」とンデゲオチェロは語る。「ほかの人々が私を受け入れてくれなかったとき、クィア・コミュニティは私を受け入れてくれた。そして長い間、それは自分が属している他のコミュニティからあまりにも遠いもののように感じられていた。でも今では、すべてが重なり合っている部分が見えるようになったわ」ンデゲオチェロによれば、本作の制作にあたっては、彼女が多大なインスピレーションを受けてきたある女性の言葉に立ち返ったという。「オードリー・ロードは、ひとつだけの問題をめぐって闘うということは存在しない、と私たちに教えてくれたわ」と彼女は言う。「それと同じように、これらのアレンジメントは原曲の同義語なの。音は違っていても、意味していることは同じなのよ」

『シノニム』に参加した錚々たるコラボレーターたちもまた、このヴィジョンの一部である。先に挙げたスターたちに加え、すでに確固たる地位を築いたアイコンと、近年頭角を現している新進アーティストたちが入り混じっている。チャカ・カーン、ブランディ・カーライル、ビル・キャラハン、クリス・シーリー、ニック・ハキム、リズ・ライト、エミリー・キング、リアン・ラ・ハヴァス、モーゼス・サムニー、デスティン・コンラッド、アノーニ、ウィロー、エヴァン・マッキントッシュ、そしてインクも、それぞれの魔法を本作に加えている。

Meshell Ndegeocello - Synonym

ミシェル・ンデゲオチェロ シノニム

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『シノニム』は、ンデゲオチェロにとってブルーノートでの3作目のアルバムである。その前の2作、『オムニコード・リアル・ブック』(2023年)と『ノー・モア・ウォーター:ゴスペル・オブ・ジェイムズ・ボールドウィン』(2024年)は、マルチ・インストゥルメンタリスト、ソングライター、シンガー、そして大きな影響力を持つプロデューサーとしての彼女の卓越した力量を示すものであった。そして3作目となる『シノニム』は、彼女がヴィジョナリーとして確固たる地位を築いていることをさらに裏付ける作品であり、すでに知っていると思っていた音楽を、まったく新鮮なものとして聴かせてくれるのである。。


ティナ・エドワーズは音楽ジャーナリスト、DJ、そして放送パーソナリティ。キュレーション・プラットフォーム「re:sonate」と「Queer Jazz」の共同創設者であり、自身のBandcampクラブ「Jazz-ish Jazz Club」のホストも務めている。


ヘッダー画像:メシェル・ンデゲオチェロ。写真:チャーリー・グロス。