ジョン・コルトレーンの生誕100周年当日にあたる2026年9月23日、長年「幻の録音」として語られてきた未発表ライヴ音源集『The Tiberi Tapes(ザ・タイベリ・テープス)』が11月6日に世界同時発売されることが発表された。日本では輸入盤4枚組LP、3枚組SHM-CD、デジタルの各フォーマットでリリースされる。
John Coltrane – Giant Steps (226 bpm – Live from The Tiberi Tapes / Visualizer)
60年以上、噂だけが先行していた「伝説のテープ」、『ザ・タイベリ・テープス』は、サックス/クラリネット奏者のフランク・タイベリが1960年から、ニューヨークとフィラデルフィアのクラブでコルトレーンの演奏を私的に録音したものだ。タイベリはレコードで聴くコルトレーンと、クラブで目の当たりにするコルトレーンの演奏には大きな違いがあると感じ、その音楽をより深く理解するために録音を始めた。
タイベリが使用したのは、携帯型のオープンリール録音機「Concertone TR-100 Transicorder」。客席で布製バッグに機材を入れ、コートの下からマイクを伸ばして演奏を記録した。目的はレコード制作ではなく、コルトレーンのハーモニーや演奏アイデアを学び、自らの演奏と教育に生かすことだった。
その後もタイベリはコルトレーンを追い続け、最終的に80本を超えるリール、26時間以上に及ぶ私的録音を残した。録音の存在はサックス奏者や研究者、コレクターの間で口コミによって伝わり、実際に聴いた人がごく限られていたことから、ジャズ界で半ば神話的な存在になっていった。
「公式レコード盤は全部持っていました。でも私には、クラブで聴かせる演奏やインスピレーションには到底及ばないように感じられたのです」とフランク・タイベリはコメントしている。
録音は一般のクラブ客席で、民生用機材を使って行われたため、音質は一定ではない。サックスやドラムが比較的明瞭に聞こえる一方、ベースやピアノの低域が弱い場面もある。しかし、本作の価値は高音質そのものではなく、コルトレーンが観客の前で試行錯誤し、音楽を前進させていく瞬間を捉えている点にあるという。
1961年、評論家ラルフ・グリーソンとの会話でコルトレーン自身も、最近の「最良の演奏」のいくつかは現場で生まれたと語り、スタジオ録音よりクラブ演奏の方が「音や再生という意味ではなく、フィーリングという意味で」良い場合があると述べている。今回の音源は、その“フィーリング”を伝える貴重な記録と位置づけられる。
JOHN COLTRANE The Tiberi Tapes【CD】【SHM-CD】
Available to purchase from our US store.本作には全11トラックを収録。冒頭には「Giant Steps」を226 BPMと262 BPMという異なるテンポで演奏した2ヴァージョンが収められている。ほかにも「Impressions」「Satellite」「Good Bait」「Resolution」など、コルトレーンの創作過程と発展をたどる選曲となっている。
コルトレーン生誕100周年を祝う年間企画「COLTRANE 100」の最注目作品の本作『ザ・タイベリ・テープス』。
60年以上を経て世に出る今回の録音は、単なる歴史的発掘音源ではない。既知の名曲をライヴの現場で自在に拡張し、次の表現を探し続けるコルトレーンの姿を、まさに“生成の瞬間”として伝える記録だ。録音技術には限界があった、が、しかし、その場で生まれていた音楽に限界はなかったことを改めて実感できる充実した内容となっている。
ジョン・コルトレーン プロフィール
ジョン・コルトレーン(1926-1967)は、現代音楽史に大きな変革をもたらしたサックス奏者、作曲家、バンドリーダー。ジャズの表現可能性を広げる一方、音楽を精神的探求と人間的なつながりの手段として追求した。ブルース、ビバップ、モード・ジャズ、アヴァンギャルドを横断し、その影響はジャズのみならず、ロック、ヒップホップ、クラシック、実験音楽にまで及んでいる。
JOHN COLTRANE The Tiberi Tapes【CD】【SHM-CD】
Available to purchase from our US store.ヘッダー画像:Photo © Dalle/Cache Agency
