オスカー・ピーターソン・トリオ ライヴ・アット・ベイカーズ・キーボード・ラウンジ(コンプリート・レコーディングス)
Available to purchase from our US store.ピーターソン、ブラウン、シグペンは1959年上旬から65年6月にかけて共演を続けた。レコーディングひとつとってもトリオ単独のもの、他のソリストや歌手とのコラボレーション作品、オーケストラとの共演など実に多彩。ツアーにも積極的に出ていたのでライヴ盤も非常に多く、発掘ものも含めると作品数は軽く50点を超える。
今回、そこに加わるのが5月15日に日本独自盤SHM-CDとして登場する『ライヴ・アット・ベイカーズ・キーボード・ラウンジ(コンプリート・レコーディングス)』なのだが、さすがピーターソンを花形アーティストとするヴァーヴ・レーベルからの発売だけあって“モノが違う”という印象を受けた。黄金トリオの新規音源が単にひとつ増えました、というのではない、実に興味深い内容である。

ピーターソンとブラウンの出会いは1949年までさかのぼる。キューピッド役となったのは興行師/プロデューサーのノーマン・グランツだ。当初はデュオでプレイしていたが、51年にギタリストを加えてトリオを結成した。いろんな奏者が出入りしたけれど、目覚ましい成果をあげたのはバーニー・ケッセルとハーブ・エリス。グループ最年長であるエリスは約5年にわたって在籍したが、歳月を重ねるうち、ツアー続きの毎日から離れて家族と落ち着いて過ごしたいという気持ちが強まってきた。彼に替わるギタリストはいないとの結論に達したピーターソンとブラウンは、旧知のドラマーであるエド・シグペンに声をかける。
そして(おそらく)想像を絶するようなトレーニングを経て、59年春、ソングブック・シリーズ(全10枚)、『フランク・シナトラの肖像』、『シッツ・イン・ウィズ・オスカー・ピーターソン・トリオ』など信じがたいほどの大量レコーディングを実施。勢いに乗ったまま60年を迎え、3月から4月にかけてはマイルス・デイヴィス・クインテット(ジョン・コルトレーン在籍)やスタン・ゲッツ(当時はスウェーデンに住んでいたはず)と共にグランツ主催のヨーロッパ・ツアーに出て、8月にデトロイト「ベイカーズ・キーボード・ラウンジ」に登場した。当“ニュー・アルバム”には、その「ベイカーズ」公演が全5セット分、27トラック収められている。
いままで発表されなかったのは、本作のもととなった録音テープのラベルが貼り間違えられていたからであるらしい。「これはなんだろう?」とたまたまテープを再生したところ、黄金トリオのみずみずしい演奏に出会うこととなったスタッフの喜びと驚きを想像せずにはいられない。
以下、このアルバムのチャームポイントをあげていこう。
★発足2年目を迎えた黄金トリオの演奏が聴けること
何という阿吽の呼吸なのだろう。経験豊富なマスター・ミュージシャンの集まりなのだから驚くには値しないかもしれないが、この時点での3人は前年から活動を始めたばかりなのである。つまりこの数年後に『ザ・トリオ~オスカー・ピーターソン・トリオの真髄』、『ナイト・トレイン』、『プリーズ・リクエスト』などが生み出されることを、彼らも、ファンも、誰も知らない。だから聴く時は、こちらもできるだけ“後年の名盤”や“後年の名声”をイレイズして、タイムマシンに乗ったような気持で楽しめば臨場感倍増だろう。その『ザ・トリオ~オスカー・ピーターソン・トリオの真髄』(61年、シカゴの「ロンドン・ハウス」で収録)の挿入曲として大いに親しまれることになる「シカゴ」や「ウィスパー・ノット」が、すでにこの60年夏の時点でそれと寸分たがわぬアレンジ、磨きぬかれたアンサンブルで演奏されているところにも注目したい。
★興味深い選曲の数々
「朝日の如くさわやかに」を弾くピーターソンは実にレアだ。とてもオフィシャルとは思えない盤に収められたどこかのライヴ演奏があるにはあるけれど、バランスの良い録音で楽しめるピーターソンの「朝日の如くさわやかに」はこれが史上初ではなかろうか。ソニー・クラークやウィントン・ケリーなど幾人のモダン・ジャズ・ピアニストに愛された名旋律がいかにピーターソン節に生まれ変わるか、これは聴いてもらうしかない。また、ピーターソンはトランペット奏者クリフォード・ブラウンのファンで、彼の書いた「ダフード」や「ジョイ・スプリング」をかなり早い時期からカヴァーしていたが、そのブラウンの死を悼んでベニー・ゴルソンが書いた「クリフォードの思い出」を60年の時点で演奏していたことも私には驚きだった。つまり『サムシング・ウォーム』での演奏は、再演にあたるのだ。「ポリティクス・アンド・ポーカー」は、当時の最新アルバムであろう『フィオレッロ』からの一曲。
★「スポージン」とは何だ?
無限のレコーディング数、無限のライヴ演奏数を誇るピーターソン。ということは、無限の持ち曲があるということでもある。「スポージン」は、この『ライヴ・アット・ベイカーズ・キーボード・ラウンジ(コンプリート・レコーディングス)』で初めて公開されたピーターソンのレパートリー。つまり他の作品で演奏した形跡がない。どちらかというとペリー・コモ、フランク・シナトラ、ディーン・マーティンなど歌手に人気のあるナンバーで、モダン・ジャズのヴァージョンとしてはマイルス・デイヴィス(プレスティッジ盤『マイルス~ザ・ニュー・マイルス・デイヴィス・クインテット』)が異彩を放つ程度か。それをピーターソン・トリオは実に小粋にプレイする。ブラッシュとスティックを鮮やかに使いわけるシグペンの冴え、ベース・ラインもソロもこれぞ職人技というべきブラウン、まったく見事な聴きものである。今年で生誕100年を迎えるレイ・ブラウンの偉業に浸るためにも、この『ライヴ・アット・ベイカーズ・キーボード・ラウンジ(コンプリート・レコーディングス)』は絶好のアイテムといえよう。
■リリース情報
オスカー・ピーターソン・トリオ
AL『ライヴ・アット・ベイカーズ・キーボード・ラウンジ(コンプリート・レコーディングス)』
2026年5月15日(金)リリース
UCCV-1214/5 ¥4,400(tax in)
オスカー・ピーターソン・トリオ ライヴ・アット・ベイカーズ・キーボード・ラウンジ(コンプリート・レコーディングス)
Available to purchase from our US store.【トラックリスト】
CD 1:
01. 枯葉
02. ジャンゴ
03. コンファメーション
04. ウィスパー・ノット
05. ビリー・ボーイ
06. ザ・タッチ・オブ・ユア・リップス
07. イル・ウィンド
08. シカゴ
09. アイ・ラヴ・ユー
10. ブルース・フォー・ビッグ・スコティア
11. ダンシング・オン・ザ・シーリング
12. ポリティクス・アンド・ポーカー
13. ホエア・ドゥ・アイ・ゴー・フロム・ヒア?
CD 2:
01. 時さえ忘れて
02. ライザ
03. イエスタデイズ
04. 朝日の如くさわやかに
05. スポージン
06. クリフォードの思い出
07. レット・ゼア・ビー・ラヴ
08. スワンプ・ファイア
09. ブルース・フォー・ビッグ・スコティア
10. サテン・ドール
11. ウッディン・ユー
12. マイ・ファニー・ヴァレンタイン
13. スクラップル・フロム・ジ・アップル
14. ビリー・ボーイ/聖者の行進
【パーソネル】
オスカー・ピーターソン (p)
レイ・ブラウン (b)
エド・シグペン (ds)
★1960年8月19日、デトロイト、ベイカーズ・キーボード・ラウンジにてライヴ録音
オスカー・ピーターソン・トリオ アット・ベイカーズ・キーボード・ラウンジ[COMPLETE RECORDINGS]【UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤】【3LP】
Available to purchase from our US store.ヘッダー画像:Photo © RolfAmbor_CTSIMAGES
