驚異的な才能を持つZ世代のデュオである。彼らは、サンダーキャットとのジャム、ハービー・ハンコックとの共演、シルク・ソニックとの共作、アンダーソン・パークのレーベル〈Apeshit〉との契約を経て、2022年にはグラミー賞にノミネートされたデビュー・アルバム『ノット・タイト』をリリースした。その作品は息をのむほど見事な出来栄えで、聴く者を圧倒した。その一方で、コルトレーンをはじめ、マッドリブやMFドゥームといったジャズやヒップホップの“神聖不可侵”とも言える存在をいたずら心たっぷりに解体し、遊び倒していた。

ドミ&JD・ベック ノット・タイト

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ドミ&JD・ベックへの期待は瞬く間に最高潮へと達した。フランス生まれでバークリー音楽大学を出たばかりのキーボーディスト、ドミティーユ・ドゥガル(DOMi)は、ビデオゲームに着想を得たビートと、超絶技巧の即興演奏にふさわしい電光石火の勢いで鍵盤を操る。一方、テキサス州ダラス出身のドラマー、JD・ベックはドミより3歳年下。5歳からドラムを始め、アート・ブレイキー、エルヴィン・ジョーンズ、トニー・ウィリアムスの演奏をYouTubeで繰り返し見て腕を磨いてきた。

大胆不敵で、ときに子どもじみた悪ふざけを見せ、自らの才能を十分に理解している彼らは、SNSで挑発的な投稿を繰り返し、とんでもない作り話を披露してきた。例えば「ドミは現存する唯一の理論物理学者」「ベックは6歳の羊研究家」などである。また、インタビューはほとんどメールでのみ受け、しかもたいていは二人で一つの人格のように回答していた。

彼らはこう語っている。「今では、多くの音楽はもはや音楽そのもののために存在していない。金儲けや、くだらないものを売るための道具になっている。僕たちが少しでもそれを変える助けになれたらと思う。それに、僕たちをどのジャンルやスタイルに分類すべきかを巡ってSNSで議論している人たちを見るのも面白いよ」

回りくどいようではあるが、それは理にかなっている。より豪華なゲスト、より大きなステージ、あらゆる面でスケール・アップしたセカンド・アルバムへの期待が天井知らずに高まる中、インターネットで最も愛された“ジャズ界のグレムリン”たちは、ほどなくして姿を消した。投稿は止まり、問い合わせにも返事はなくなった。

誰が尋ねていた(WHO ASKED?)のか? 答えは簡単である。そう、私たち全員であった。

DOMi & JD BECK - WHO ASKED?

ドミ&JD・ベック フー・アスクド?

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実際のところ、ドミ&JD・ベックは忙しくしていた。本人たちは真顔で言う。毎晩きっちり8時間眠るのに忙しく、ゲームに何時間も費やし、犬の散歩をし、バーチャル迷宮をパルクールで駆け抜け、THC入り炭酸飲料でハイになるのに忙しかったのだと。そして誰も予想できなかった一方で、誰もが(彼ら自身を含めて)聴きたいと願っていた作品を作ることに没頭していた。

世界で最も健康的でありながら、どこか常軌を逸したライフ・スタイルとも言えるその生活は、不思議なことに『フー・アスクド?』という作品を生み出した。それは彼らにとって最も野心的であり、同時に最も親密なアルバムとなっている。

全15曲を聴き進めて最初に気づくのは――彼らが大文字の「I」を避けて表記していることはさておき――誰かがドミ&JD・ベックの道具箱にオーケストラを丸ごと放り込んだかのようなサウンドである。冒頭曲「エピファニー[EPHiPHANiE]」は、オーケストラによる映画音楽的スケール、アニメーションのような遊び心、ゲーム機のメロディが飛び交う交響的な狂騒曲であり、伝説的なオランダのメトロポール・オーケストラとのアレンジ制作から生まれた美学を垣間見せる序章となっている。

楽譜制作ソフト「Sibelius」が今や彼らの親友となり、今回はまず楽曲そのものを作曲することから制作が始められた。

「コンサルティーノ(フォー・ピアノ・ドラム&オーケストラ)[CONCERTiNO FOR PiANO, DRUMS AND ORCHESTRA]」では、コンサートホールの華麗さと地下スタジオでのジャム・セッションの熱気が衝突する。ドミは狂気を帯びた天才のような自信に満ちた演奏で鍵盤を操り、ベックは、その複雑さを感じさせないほど自然なリズムで応じる。周囲を彩るアンサンブルは各パートが別々に録音されているにもかかわらず、まるで全員が肩を並べて演奏しているかのような生命感を放っている。

そして次に気づくのは、ドミ&JD・ベックが歌っていることである。長年に渡り、すべてを楽器だけで語ってきた二人にとって、それは意外なほど無防備な変化である。しかしヴォーカルは超絶技巧と競い合うためのものではない。それもまた一つの質感であり、一つの色彩であり、さらにはもう一つの楽器なのである。映画脚本として書かれながら実現しなかった作品のために生まれた歌詞もあり、その言葉には曖昧で多義的な意味が込められている。「レイン[RAiN]」では、色彩豊かな雨のように漂うサウンドの中で、「私たちは障害を受け入れ/未知の感情に慰められる」と歌う。「パズル・ピーシズ[PUZZLE PiECES]」では、「一つひとつの欠片が、一つになっていく」という歌声が響き、アイデアに満ちたこの楽曲が、個々の要素の総和を超えた作品であることを示している。

「グローイング・オールダー[GROWiNG OLDER]」、感謝に満ちた「ファントム・スレッド[PHANTOM THREAD]」、そして四本足の友への哀愁漂う、それでいてJ・ディラを思わせる「スモール・アイズ[SMALL EYES]」には、現実の人生が静かに忍び込んでくる。一方、「ラヴリー・マスカレード[LOVELY MASQUERADE]」には濃密なグルーヴが満ち溢れ、堅苦しい純粋主義者のネクタイを緩めることを狙っている。もちろん、ジョークや悪ふざけは相変わらず不遜である。しかし今回は、それらが緻密な職人技の中へ見事に織り込まれている。そしてアルバム終盤には、美しさが際立つ瞬間が数多く訪れる。「クライミング・ハイ[CLiMBiNG HiGH]」では二人の歌声が魅惑的なヤコブの梯子(※旧約聖書に登場する天国の階段のこと)のように編み上げられ、どこまでも上昇して行く。「エピローグ[EPiLOGUE]」は弦楽器に包まれた煌めく響きで聴き手を優しく癒やそうとするが、最後には予想通り、それでいてなお驚きを伴う予測不能さで、心地良い余韻を残したまま結末を宙吊りにする。

「僕たちのことはもう分かったと思っている?」彼らはそう問いかけているようだ。まだ、分かっていない。

だから、問い続けてほしいのだ。

DOMi & JD BECK - WHO ASKED?

ドミ&JD・ベック フー・アスクド?

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ジェーン・コーンウェルはオーストラリア生まれで、ロンドンを拠点に活動するライター。英国やオーストラリアの出版物やメディア(SonglinesやJazzwiseなど)で、芸術、旅行、音楽に関する記事を執筆している。かつてはロンドン・イブニング・スタンダード紙のジャズ評論家を務めていた。