世界一のジャズ・プレーヤーを目指す主人公・宮本大が、故郷・仙台から東京、ヨーロッパ、そしてアメリカへと活躍の場を広げながら成長していく大人気ジャズ漫画「BLUE GIANT」シリーズ。
現在「ビッグコミック」にて連載中のシリーズ最新章、ニューヨーク編『BLUE GIANT MOMENTUM』がセレクトするインパルス・レコードの名曲集『BLUE GIANT MOMENTUM at impulse!』がSHM-CD、LPで6月24日にリリースされたことを記念し、「BLUE GIANT」シリーズの作者であり本作の選曲・監修をNUMBER 8と共に務めた作者、石塚真一と2023年に公開された映画『BLUE GIANT』で主人公・宮本大のサックス演奏を担ったサックス・プレイヤ—、馬場智章の二人の特別対談を敢行、ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、そしてインパルスに関して、熱く語って頂いた。
ヴァリアス・アーティスト BLUE GIANT MOMENTUM at impulse!【180g重量盤】【アナログ】
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音楽との出会い
—– おふたりが初めて意識した音楽は何ですか?
石塚真一: アニメソングや歌謡曲ですね。子供の頃は子供らしい音楽を聞いていました。「銀河鉄道999」とか「母をたずねて三千里」とか、ちょっと暗い感じの曲が好きでしたね。
馬場智章: 僕は、持っていたCDで言えば、「だんご3兄弟」と「ポケモン言えるかな?」。それがまさしく自分の世代を代表する曲たちだったんじゃないかなと思います。
—– それからジャズに親しんでいくわけですね。
馬場: 子供の頃に街の音楽教室みたいなところでピアノを習ったことはありますが、ジャズとの出会いは、多分6歳の頃だったと思います。叔父が所属するアマチュアのビッグバンドのコンサートを見に行きました。とにかく衝撃的でしたね。生演奏を目の前にすることも少なかったですし、大人がみんなバシッとスーツを着て、大人数で、すごい迫力の音楽をやっているというところに圧倒されて、それで・・・『BLUE GIANT』のサントラに一緒に参加したドラマーの石若駿と出会うきっかけになった、札幌ジュニア・ジャズ・スクールという、小学生を対象にしたビッグバンドに参加したんです。
石塚: 僕は大学の頃、友達の部屋でソニー・ロリンズの『サキソフォン・コロッサス』を聴きました。シルエットのジャケットもかっこよかったんですが、それを聴いて思い出したのが中学生の時に聴いたUSAフォー・アフリカの「ウィ・アー・ザ・ワールド」。スティーヴィー・ワンダーとか、多くの人が好き勝手に歌うでしょ。あの「こんなに自由でいいの?」と思った気持ちとロリンズの演奏が繋がって、とても感動したのを覚えています。
馬場: ジャズのサックスを先生に習うことになった時に、「こういうのを聞いてみたら?」と勧められたのがチャーリー・パーカーやロリンズだったんですが、ビッグバンドから始めたからなのか、当時の自分にはピンとは来ませんでした。ほか、マイケル・ブレッカー、デヴィッド・サンボーンとか、もっと後の世代だとジョシュア・レッドマンのめちゃめちゃ有名な「ジャズ・クライムズ」を聞いて、「うわ、かっこいいな」と思って。いわゆるジャズの歴史みたいなのをさかのぼったのは、その後です。

おしゃれなソニー・ロリンズはぼくたちを誘ってくれる
—– 先ほどお話に出たソニー・ロリンズですが、5月に惜しくも亡くなってしまいました。おふたりにとってのロリンズの魅力、かっこよさを教えていただけますか。
石塚: あの泥臭さが好きですね。とても尊敬されていて、いろんな人に影響を与えていて、すごく吸引力があるでしょう。でも僕はロリンズを見たことがないんだよね。馬場さんは?
馬場: 僕は小学生の時にライヴを見ました。ファンキーなおじいちゃんが出てきて演奏して、すごい迫力だったことは覚えています。
石塚: 特に思い入れのある演奏は?
馬場: ディジー・ガレスピーの『ソニー・サイド・アップ』に入っている「エターナル・トライアングル」ですね。ソニー・スティットとの2テナーですが、学生時代にソロをコピーしたことがあるんです。この曲はコード進行がちょっとややこしいというか、トリッキーなパートがあるんですよ。そのパートをスティットはきれいに吹いていく。「すごい勉強になるな」と思って、その後にロリンズのパートをコピーしたら、大迫力で。
石塚 最終的にロリンズがソウルフルな男気で持っていく感じ。彼は一点集中型みたいな、「これをやらせたら優勝」みたいな感じでしょう。なんかこう、個性が爆発しているんですよね。髪の毛もモヒカンにしたり、おじいちゃんになってからは、妖精みたいな雰囲気で。
馬場 僕がライヴを見たときは、真っ赤なシャツを着ていましたね。
石塚 おしゃれな人が出てくると、見てる側は誘われるよね。
—– 特におすすめのロリンズのアルバムは?
馬場 僕は『ソニー・サイド・アップ』ですね。ここに入っている「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」も好きです。
石塚 僕はジョン・コルトレーンとの共演が聴ける『テナー・マッドネス』、それから『ウィズ・モダン・ジャズ・カルテット』。あの中に入っている「スローボート・トゥ・チャイナ」がフワッとしていて気持ちいい。馬場さん、『サキソフォン・コロッサス』はどう?
馬場 名盤ですよ、すごいですよ。でも「セント・トーマス」は「有名すぎて演奏しないランキング」の上位に入るかな。手出しをしてはいけない殿堂入りの曲というか、ロリンズが最高の正解を出してしまったから、サックス奏者としては取り上げにくいです。
石塚 それはわかるなあ、あまりにも完成されているからね。ありがとう、ソニー。ソニーがいなかったら、僕は漫画を描いていません。
インパルスは「ジャズってこんなかっこいいんだ」と思わせてくれる
—– このたび発売される『BLUE GIANT MOMENTUM at impulse!』は宮本大が契約したインパルス・レコードの名曲集ですが、このコンピレーションが出た経緯について教えてください。
石塚 「ジャズってこんなかっこいいんだ」と思わせてくれるレーベルです。ジョン・コルトレーンからの憧れもありますし、レーベルのロゴにもエクスクラメーションマークがついていて、本当に「衝動」という感じがします。漫画『BLUE GIANT MOMENTUM』の中で、主人公の宮本大のレコードがインパルスから出るという夢のような経緯がありまして、それにちなんでこのアルバムを作っていただいて、光栄極まりないです。選曲に関して言うと、「ニューヨークだな」と思います。決してカントリー・スタイルじゃなくて、ニューヨークという環境が音楽を作っているのかなという。どの曲もスタイルは違うけれど、わちゃわちゃしてて、かっこよくて、洗練されていて。インパルスからの発売は最高、もう言うことなしですよ。

馬場 ジャケットの絵も、気合の入った、「一発録りだぜ」という感じですね。コーヒーが描かれているのもいいです。ミュージシャンはレコーディングの時、コーヒーめっちゃ飲みますから。どのスタジオにも大量のコーヒーが用意されているので、「あるある」だと思いました。
やっぱりコルトレーンのアルバム『バラード』はすばらしい
—– 『BLUE GIANT MOMENTUM at impulse!』のオープニングとエンディングには、インパルスの看板アーティストであるジョン・コルトレーンの演奏が収められています。彼は今年で生誕100年です。
石塚 ジョン・コルトレーンってどう?教えて。
馬場 最初はわからなかった。何をやっているんだろうという感じですよ。コルトレーンは音楽の幅がすごく広いじゃないですか。ブルーノート盤ですけど『ブルー・トレイン』の「モーメンツ・ノーティス」はコピーしましたね。音楽理論とテクニックが詰まった演奏です。かと思いきや、インパルスの『至上の愛』のようなスピリチュアルな演奏の時期もあって、ギャップがすごいと思います。アルバムによってガラッと雰囲気が変わるんです。
石塚 40歳で亡くなっていなかったら、何をしていたんだろうとも思いますね。ずっと走り続けて、どんどん変化していったのか。ロリンズと再度共演したのか。彼の歩みはインパルスの「衝動」とも合っているような気もするし、ロマンを感じます。
馬場 ブルーノート盤ですけど『ブルー・トレイン』の「モーメンツ・ノーティス」はコピーしましたね。音楽理論とテクニックが詰まった演奏です。かと思いきや、インパルスの『至上の愛』のようなスピリチュアルな演奏の時期もあって、ギャップがすごいと思います。アルバムによってガラッと雰囲気が変わるんです。
石塚 40歳で亡くなっていなかったら、何をしていたんだろうとも思いますね。ずっと走り続けて、どんどん変化していったのか。ロリンズと再度共演したのか。彼の歩みはインパルスの「衝動」とも合っているような気もするし、ロマンを感じます。
—– 特に好きなコルトレーンのアルバムを挙げるとしたら、何になりますか?
馬場 僕は『バラード』が好きです。
石塚 取られた!(笑) なんていいアルバムなんだろう。

馬場 初めて聴いたのは中学生の頃ですが、シンプルに、ジャズのど真ん中で、かっこいいなって思ったんです。以来、自分のお気に入りですね。
石塚 僕は『ジョン・コルトレーン・アンド・ジョニー・ハートマン』も好きです。昨今、若者の恋愛離れが言われていますけど・・・、このアルバムを聴いたときに「こんな恋をしてみたい。本当に人を好きになると、こんな感じになるのかもしれない」と憧れました。本当にロマンチックな音楽ですからね。実はジョニー・ハートマンの歌声には、最初、甘ったるい印象もあって馴染めなかったんです。でもどんどん引き込まれていって、今はたまらないです。
馬場 サックス奏者が自分のアルバムにシンガーを入れるのもすごいと思います。あと僕が印象に残っているのは『ライヴ・アット・バードランド』の「アイ・ウォント・トゥ・トーク・アバウト・ユー」。最後に、爆発したようなカデンツァを演奏するんです。途中まで本当に美しいバラードなのに、突然激しくなって、それは衝撃的でした。
石塚 バラードがいいミュージシャンはいいね。
馬場 バラードは担当楽器に関係なく音楽家全員の課題だと思います。いちばん難しいと感じるところです。
と、会話はこの後もとどまるところを知らなかったのだが、今回はここまでとしたい。
なお、こちらの対談の全貌は、『BLUEの初回プレス盤に封入されているU-CONNECTカードのQRコードを読み取り応募いただくと応募者全員が7月1日(水)正午以降に動画にて視聴できる。
ヴァリアス・アーティスト BLUE GIANT MOMENTUM at impulse!
Available to purchase from our US store.photo: Tomokazu Tazawa
