その夢の中で古書が積み上げられた図書館の中にいた彼は、修道僧たちに「あなたがミュージシャンだと私たちは知っている。だからあなたに本当の音楽とは何かを聴いてほしい」と伝えられ、その後彼が愛するニーノ・ロータ、セロニアス・モンク、ソニー・ロリンズ、チャールズ・アイヴズ、ジミ・ヘンドリックス、ハンク・ウィリアムス、アンドレス・セゴビア、ロバート・ジョンソンなどの音楽が透き通るようにクリアに流れてきて、目を覚ましたという。(プレスリリースより)

その夢の中で鳴っていた音楽がこのアルバムのコンセプトだ。

Bill Frisell - In My Dreams

ビル・フリゼール In My Dreams

Available to purchase from our US store.
購入

そのためにフリゼールはトーマス・モーガン(b)、ルディ・ロイストン(ds)に加え、ジェニー・シェインマン(violin)、エイヴィン・カン(viola)、ハンク・ロバーツ(cello)の3人の弦楽器奏者を迎えた。

これまで彼は何度も弦楽器を作品に加えてきた。『Richter 858』『History, Mystery』『Big Sur』『All We Are Saying』『Disfarmer』などなど。近年ではブルーノート移籍後の『HARMONY』にもハンク・ロバーツが起用されていた。それらに参加していたのは全て上記の3人のうちの誰かだ。つまりビル・フリゼールにとってストリングスを入れるということはこの3人を起用するということになる。

ここでは新作のサウンドを理解するためにストリングスのこと、この3人のこと、そして、その夢の中の音楽のことについて話を聞いた。

(取材通訳:丸山京子)

――アルバム『In My Dreams』のコンセプトを聞かせてください。

簡単な話でね、ここ数年、トーマス・モーガンとルディ・ロイストンとのトリオでたくさんのギグをこなしてきたよね。日本にも行ったし、オーストラリア、ヨーロッパ…と世界中回った。そしてその少し前までは、ストリング奏者のジェニー・シェインマン、エイヴィン・カン、ハンク・ロバーツとのグループでも、たくさん演奏してきた。それから数年経ってしまい、また彼らともやりたいなと思っていた。それで「だったらみんなを一つの場所に集めよう」と思ったんだよ。それがそもそものアイデアだ。

――資料によると30年前の夢を形にするってテーマもあったとか。今になって大昔の夢を形にしようと思ったのはどんなきっかけがあったのでしょうか?

それが本当に驚くような夢でね。フードをかぶった修道士のような人たちが出てくるんだ。古い家の階段を上がってある部屋に入ると、そこは本でいっぱいで、古い図書館のような薄暗い部屋だ。テーブルを囲むように小さな人たちが座っていて、私を手招きし、こう言うんだ。「物事が本当はどう見えるのか、色が本当はどんな姿なのかを見せよう」。そして小さな箱を取り出して開き、中から小さなかけらを取り出して「これが”赤”という色だ」と言うんだ。覗き込み「なんだこれは!」と思った。まるで生まれて初めて”赤”という色を見たみたいに、光り輝いていて、ただただ圧倒された。

 すると今度は「お前は音楽家だね。本当の音楽がどう聴こえるか、聴いてごらん」と言う。すると何かが私の額の前から中に突き抜けるみたいに、それまで聴いてきた音のすべてがいっぺんに流れ込んできたんだ。すごくはっきりと、信じられないほど美しく!そこで目が覚めた。

――すごい夢ですね…

 その時以来、その夢で聴いた音をずっと心にとどめている。でも二度と取り戻すことはできなくて、それでもずっとそこに手を伸ばしている。「あの音を見つけたい」と…。私にとって音楽はそういうもので、演奏するときはいつもそこに向かっているんだ。自分より少し先にあって、決してたどりつけないどこか。それでも「今、聞こえた気がする」「見えた気がする」と思う瞬間があって。

 だからこのアルバムは、あの夢そのものというわけではない。でもその夢は、いつも、そこにあるんだ。

――ところで「夢」って不思議な現象ですよね?その「夢っぽさ」はこのアルバムのサウンドにも反映されていますか?

そうであってほしいといつも願っているけど、正直なところはわからない。難しいのは、聴いてくれる人が何を聴くか、わからない点だ。私にとっては、いつも“何か”を探し続けることであって、少しずつその何かに近づいているのかもしれないけど、聴いている人がどう感じるかまではわからないからね。

 演奏しているとき、出している音が私を音楽の中に連れて行ってくれるような瞬間がある。それって、本当に素晴らしい感覚だ。でもオーディエンスもついてきてくれているのか、私にはわからない。きっと彼らもそれぞれの音を見つけてくれているんだと思う。人はみんな違う音を聴いているわけだから。君が聴きたいと思う音を私が出すことはできないし、私は自分が聴きたい音を出すしかない。だから、もし私が楽しんで演奏するのを見て、それでみんなも音楽の中に入ってきてくれたならいいな、と思う。

――先ほど、ジェニー・シェインマン、エイヴィン・カン、ハンク・ロバーツとやりたかったから、と言っていましたが、このコンセプトにヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが必要だった理由はありますか?

大事なのは楽器よりもむしろ人だ。と言いつつも「ストリングスがあったらいいだろうな」とは思っていた。でもそれ以上に、それぞれの個性や互いの相性が大事だ。トーマスの頭の中とエイヴィンの頭の中を思い浮かべ、二つが一緒になったらどうなるだろう?と、一種の化学反応を想像した。

 私の父は生化学者だったので、いつも何かと何かを混ぜて実験をしていて、私には全然理解できなかった。大昔、バンドを観にきてくれたとき「とてもいい化学反応だった」と言われた。そのことを今になって思い出すよ。異なる個性を混ぜ合わせることで、おもしろい何かが起きる、ということなんだろうね。

――個人的には「夢」というファンタジックなコンセプトにはストリングスが必要だった、ということなのかなと思ったんですが。

うん、難しいんだが、ある意味円のようなもので…。でもなんというか、難しいな。

――鶏が先か卵が先か、みたいな?

ああ、皆がお互いを知っているから、信頼し合えるし、誰も怖がっていない。この話はよく彼らにもするんだけど、間違えてもいいんだ。音楽の中では全員が思い切って冒険していい。「これは正しい」「これは違う」なんてものはない。ただ「この場所を一緒に進んで行ってみよう」という感じかな。みんなが安心して、怖がってなければ、みんなで挑戦できる。もし道に迷っても、誰かが助けてくれる。皆が「心配しなくていいんだ」と感じられたなら、これまで行ったことのない未踏の領域にだって踏み出せる。彼らはそういうことができる人たちだ。

付き合いも長いしね。ハンク・ロバーツとはもう50年になる。一番短いトーマスでさえ、20年くらいは知っているんじゃないかな。だからこのメンバーで演奏すると、まるで会話だよ。みんながいっぱい話して、相手の言葉に耳を傾け、助け合おうとしているんだ。

――「大事なのは人だ」っておっしゃったので、人について聞きますね。あなたにとってジェニー・シェインマンはどんなヴァイオリン奏者ですか?

彼女のメロディはとても独特だ。というのも、彼女はどちらかというとフォークミュージックの中で育っているんだ。もちろん音楽院でクラシックも学んでいるけれど、子供の頃は、家族や周囲の人たちと音楽を演奏していたという。彼女が育ったのはPetroliaという町。私も訪れたことがあるが、町とも言えなくらい小さなとこで、カリフォルニア州のかなり北部、海が近い森の中にある。学校まで馬に乗って行って通ったっていうんだからね。そのくらい街からも遠く離れていた。だから子供の頃は、家族や友人ともっぱら古いフォークソングを演奏していたんだ。それで、たとえば「Hard Times」とか、私が書いた「When We Go」を弾く時の彼女の音には、フィドル音楽の伝統が聴こえるんだ。

――なるほど。

 エイヴィンはというと、それとはまるで違う。彼は色々な地を旅し、インドでインド音楽やペルシア音楽を学んだ。全員が音楽を学び、ジャズもクラシック音楽も知っている。そういうジャンル分けはあまり関係ないのだけどね。全員が本当に深いところに音楽の基本の感覚を持っている。でもどこで育ったかとか、家庭の環境とかはそれぞれ全然違うんだ。

――エイヴィン・カンはどんなヴィオラ奏者ですか?インド音楽やペルシア音楽を学んでいるとおっしゃっていましたが。

ああ、その要素はあるね。あとは、もしかすると楽器のせいもあるかもしれない。ヴィオラの人間の声にも近い低い音域というか。

 私と出会って直後、彼はインドに行ってしまい、そこで暮らしながら現地の先生について学んでいたんだ。彼はイントネーションの感覚がものすごく優れている。どの一つの音をとってもね。たとえばスケールを弾くとするよね。CのキーでCを弾く。そこが「ホーム」だ。次にDを弾く。でもDの弾き方には、Cとの関係の中で、何百万通りもあるわけだ。どの音もどこに音を置くかによって生まれるパワーがあって、その感じ方も人によって少しずつ違う。それは文化の違いなのかもしれない。ロバート・ジョンソンが感じる3度と、日本の三味線奏者が感じる音とでは違うように、同じ音を弾いても、まったく同じではなく、与える印象も違うんだ。

 エイヴィンはそういったイントネーションの違いや、音と音の間にあるわずかな差にもとても敏感だし、深い知識があるんだよ。

――ではハンク・ロバーツはどんなチェロ奏者ですか?

ハンクもアメリカ中西部の小さな町で育った。ニューオーリンズまで南部じゃないけど、インディアナ州でも南側なので、南部の州の素朴な田舎の要素がある。話し方を聞けばわかるよ。同時にファンクの要素がいっぱいある。彼は高校時代、R &B /ファンク・バンドでトロンボーンを吹いていて、実は私も高校でThe Soul Merchants というグループにいた。ハンクのバンドも似た名前で The Soul Messengers とか言ったよ。お互い、やっていたのはジェームズ・ブラウンとかテンプテーションズとかのカヴァー。似たような音楽が好きだったってことだ。ハンクはそういった南部的な要素を深いところに受け継いでいるんだ。ファンク…そしてブルースも。

――ハンクらしい演奏が特に出ているのは「この曲のこの部分」みたいなのがあったら知りたいんですけども。

彼ら(ストリングス)の音は個々ではなく、全員で一つだ。それでも「Again」という曲には、ハンクが前面に出てきているのがわかる瞬間がいくつかある。 

 このアルバムには、誰かがソロを取るという場面は多くない。でもたとえば「Curtis」ではエイヴィンの存在が大きいし、彼の音がよく聴こえる。あそこでの中心的な声は彼なんだ。その意味で「Again」はさっきも言ったようにハンクが前に出ている曲だし、「When We Go」はむしろジェニー。そうだと言っていいのかもしれない。とはいえね、私はみんながひとつになって作っているんだと思いたいよ。

――これまでに何度も3人のストリングスとの録音をしているので慣れているとは思いますが、とはいえ、3種のストリングスの音が入っていると音域がそれなりに埋まってしまうこともあるし、弓で弾くとロングトーンやポルタメントがあり、あなたにギターにはかなり影響を与える気がします。3人の弦があると、あなたのギターの演奏はどのようなことを意識して演奏することになりますか?

弦が私の演奏のじゃまになるということは絶対ない。いつでも私が入り込んでいける余地がある。それこそ、曲の中に入っていくというか…。それを探るのが好きなんだ。

――入っていく…

 もし彼らがひとつのコードを鳴らしていたなら、私は上に乗っかるのではなく、中に入り込む。そこから別の音が生まれるんだ。彼らが弾いた3音と私が弾いた3音が重なるとき、どっちの音なのかわからなくなる。そのわからない感覚が好きなんだ。指先が「待って。これを弾いているのは自分?それとも彼ら?」と言っているような感じかな。それは音のときもあれば、コードのときもある。もしくはメロディを弾いているときも、ユニゾンで弾いていても、同じ音を鳴らしていても、音それぞれの振動は違うはずなのに、指先では「わお、今この音を出しているのは誰だ?」と感じている。つまり、そうやってひとつに溶け合うのだけど、それが私のじゃまになることは決してないんだ。なぜかどんなときでも、私はその上に乗ることも下に潜ることも、押し返すことも、その内側に入ることも、外側に回ることもできるって思える。

――溶け合うってのは正にあなたの音楽を指す言葉な気がしますね。

 たとえば今回、ビリー・ストレイホーンの「Isfahan」をやっている。あの曲はわりと構造がはっきりしていて、弦パートはデューク・エリントンが編曲し、エリントン・バンドが演奏していたほぼそのままだ。一方で、トーマスとルディと私は、もう少し自由だ。まずは私がメロディ、弦がエリントンのパートを弾いているが、私にはトーマスとルディがいるから、行きたい所へはどこでも行ける。次のパートでは、弦が奏でる1本の線のようなユニゾンのメロディに、私は色々とハーモニーを加えたり、ときには彼らと一緒に弾く…というぐあいだ。

――なるほど。

 アルバムの中ではかなり構成が決まっている1曲だと言っていいだろう。弦はずっと同じことを弾いていて、コードも弾いていない。ただ旋律のラインだけを弾いているんだ。

――夢の話に戻りたいんですが、資料によるとあなたの夢の中にアーティストが何人も出てきたと。それについて聞かせてください。ニーノ・ロータに関しては『Amarcord Nino Rota』『When You Wish Upon a Star』で過去にカヴァーもしています。ニーノ・ロータのどんなところに惹かれていますか?

彼の作品が大好きなんだ。フェリーニ映画との結びつきという点でもね。あの映像や想像力は本当に素晴らしい。フェリーニ映画を思い浮かべると、音楽が映像と完全に一体となっているんだ。バーナード・ハーマンとヒッチコック映画もそう。『めまい』とか『北北西に進路を取れ』といった作品を思い浮かべるとき、色とかフィルムの質感が見えるというか、「音の色を聴いている」ようで。ニーノ・ロータやモリコーネといった映画音楽の作曲家たちがとても好きなんだよ。

――次はチャールズ・アイヴズです。『Have a Little Faith』でアイヴズのカヴァーをしていましたよね。

アイヴズのシンプルなメロディ、たとえば古いフォークや教会音楽といったトラディショナルな音楽の要素を用いている点が好きなんだ。それは私自身もやっていること。私の場合、シンプルなメロディをちょっと変わった文脈に置くことで、違う聴こえ方になる。ある種、音のコラージュのようで、たとえば2つの違うキーが同時に鳴る、というようなのがとても好きだ。チャールズ・アイヴズはその達人だった。

 これは異なるリズムでも起こることだ。ライヴで演奏しているとき、特に即興の場面でよく起こる。それを譜面に書き起こすのはとても難しいけど、演奏をしている時っていうのは、誰か一人がある場所で演奏し、別の一人がまた別の場所で演奏をすることで、ある種の衝突が起きる。でも同時にハーモニーもそこで生まれる。そういうのが私は大好きなんだ。

――衝突ですか。

 チャールズ・アイヴズには、子供の頃の有名な話がある。知ってるかい? 父親が2つのマーチングバンドに別々の曲を演奏させて、2方向から行進させ、音が混じり合うのを聴かせたという話だ。私もそういうふうに2つの違うものが同時に起こるという発想が大好きだ。オーネット・コールマンの音楽でもそれは聴ける。バンドの一人はここにいて、もう一人は別のどこかにいて、でも誰もそれぞれの場所に留まることを恐れない。そうやって、聴いていて驚くような最高のカウンターポイントが生まれるんだ。

――なるほど。では、次はハンク・ウィリアムス。あなたは過去に「I’m So Lonesome I Could Cry」や「Cold, Cold Heart」をカヴァーしています。

彼はとにかくピュアだし、歌詞がいいんだ。「I’m So Lonesome I Could Cry」の歌詞は本当に素晴らしい。さっきエイヴィンについて話したことと一緒で、イントネーションなんだと思う。分析するのは難しいんだけど、彼が歌うときに特定の音を出す感じが、ほんのわずかフラットだったりシャープだったりして、とにかく心に響く。

 歌い方に加えて、彼の書く曲もいいんだよ。物語、バンド…ギターも何もかも。彼が弾くアコースティックギター、歌声の周りに絡みつくスライドギター。シンプルだけど、単純なわけではない。クリアなんだ。余計なものが何もない。心にまっすぐ届いてくる。

――先ほど挙がった「Hard Times」はスティーヴン・フォスターの曲です。この曲がこのアルバムに必要だった理由を聞かせてください。

これもいい曲だよね。厳密なプロテストソングではないけれど、それに近い曲だ。歌っているのは住む家もない人たち、つまりホームレスのことだ。今の時代にも十分通じるんだ。あれが書かれたのはもう150年前とか、とにかくずっと昔だ。でも結局、人間にまつわることは変わらないってことさ。何度も歌はめぐってくる。今、人が抱える問題も、昔からずっとあった。だから私たちは努力し続けなければならないんだ。

――ボブ・ディランもカヴァーしていましたが、その文脈ってことですかね。そして、「Home on the Range」です。これはアメリカ人ならだれでも知っている曲だと思います。実は日本語の歌詞もあって、たぶん日本人でさえ誰でも歌える曲なんですよね。なぜこの曲を?

それは私がコロラド州デンヴァーで育ったっていうことも関係しているのかな。自分ではよくわからないけど、もしかしたら、生まれる前から母が歌っていたのを聴いていたのかもしれない。人生の中でずっとそこにあったような曲なんだ。

 頭の中で少しロマンチックに美化されたイメージなのかもしれないが、私が育ったデンヴァーには山があって、カウボーイや馬がいて、空はどこまでも広く、大地は平らだ。西を見れば圧倒されるような山並みが広がっているのに、反対側を見ると、ひたすら平らな平地が続いている。あの曲には、そういう景色やコロラドを思い出させる何かがあるんだ。ノスタルジアというか。

――先ほどからいろんな人の話をするときに、それぞれの故郷の風景の話をしていますね。アメリカのいろいろな土地の風景は、あなたの音楽にとってインスピレーションになっていたりしますか?

それはあるのかもしれないね。コロラドに帰ると、空気の中に匂いを感じて「うわぁ」と思わされる。それが木の匂いなのか何なのか、自分でもわからないけど、ニューヨークともカリフォルニアとも違うんだ。コロラドは標高が高い。山の上に行けばさらに高い。そして松の木が多い。そのせいも多分あるんじゃないかな。とにかく、澄んだ乾いた空気の中に匂いを感じるんだ。木の匂いのような、ただの空気の匂いなのかわからないけど、わかるのは子供の頃から知っている匂いだってこと。

 歳を重ねるにつれて、子供の頃の感覚と繋がっていようとしているっていう部分はある。音楽にとって一番大切なのは、興奮してワクワクする感覚だ。子供が何かを初めて見て「わあ、なんてかっこいいんだ!」と感じる気持ち。それが一番なんだ。だから私はその気持ちを持ち続けたい。

 もちろん、今でもそう感じているよ。音楽はそれくらい私を驚かせ、「わあ」という気持ちを思い出させてくれる。それを失いたくない。実際、アメリカのあの地域の風景は本当に素晴らしくてね。コロラド、ニューメキシコ、アリゾナ…そしてそこに広がる峡谷とかからは、特別な何かを感じるんだ。

――あなたがこの3人を度々起用していることからもわかるようにあなたが弦を使う時は「いわゆるストリングス」と異なるものを求めている気がします。あなたが好きな、もしくは、自分のインスピレーションになった「複数の弦楽器が入った印象的な曲」があったら教えてください。

もちろん。先ほど話に出たチャールズ・アイヴズがオーケストラの弦楽器を使って出す大きなサウンドとか、バッハの無伴奏ヴァイオリンの作品もすごいよ。でも誰が弾くかによっても違うんだ。ものすごく機械的に聴こえることもあるし、演奏者が本当にメロディを聴きながら弾けば、まったく違ってくる。

 モートン・フェルドマンの音楽に聴かれる長い弦の音もとても好きだ。ビブラートもかけずにただ演奏される音。余計な表現を一切排除した、純粋な音そのものの響き。フェルドマンの作品はものすごくゆっくりと進んでいくので、聴き手は一つの音、そして次の音…と一音一音に集中して聴くことになる。そうやっていくうちに時間の感覚が曲がっていき、どれくらいそれが続いてたのかすらわからなくなってくるんだ。

     

■リリース情報

Bill Frisell - In My Dreams

ビル・フリゼール In My Dreams

Available to purchase from our US store.
購入

ビル・フリゼール AL『In My Dreams』
2026年2月27日発売 輸入盤 / 配信

収録曲目:
01. Trapped in the Sky (2:07)  
02. When We Go (7:52)
03. In My Dreams (5:12)         
04. Isfahan (6:33)
05. Give Me a Home (2:53)
06. Why? (3:17)
07. Curtis (a year and a day) (7:24)
08. Hard Times (4:42)
09. Again (6:16)
10. Small Hands (6:19)
11. Never Too Late (4:06)       
12. Home on the Range (5:37)

パーソネル:
ビル・フリゼール(g)、ジェニー・シェインマン(violin)、エイヴィン・カン(viola)、ハンク・ロバーツ(cello)、トーマス・モーガン(b)、ルディ・ロイストン(ds)

★2025年、ニューヨーク、デンヴァー、ニュー・ヘイヴンにてライヴ録音、バークレー、オパス・スタジオにて録音