小学館「ビッグコミック」で連載中の大人気ジャズ漫画『BLUE GIANT MOMENTUM』(作者:石塚真一 / story:NUMBER 8)。2025年9月25日号に掲載のエピソードでは、主人公のサックス奏者・宮本大が自身のアルバムの作曲を終え、リリースするレーベルを探して交渉にあたる姿が描かれている。3社をまわったのち、大が訪れたのが「インパルス・レコード(impulse!)」のオフィスだった。登場する4社の中でインパルスは唯一実在するレーベルだ。漫画で初めて同レーベルの存在を知った読者に向けて、その歴史を簡単に紹介してみよう。

ジョン・コルトレーン バラード

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インパルスは今から65年前の1960年にニューヨークで設立された。当時、多くのジャズ・レーベルがインディペンデント経営(いわゆるインディーズ)だったのに対し、アメリカの大手レコード会社ABCパラマウント傘下のジャズ・レーベルとしてスタートした。大手ならではの潤沢な予算で、スイング・ジャズからモダン・ジャズまで多彩なビッグ・ネームの作品を制作。LPジャケットも当時のジャズ・アルバムとしては異例である豪華な見開きタイプが採用されている。

レーベル専属のプロデューサーは、設立当初はクリード・テイラーが務めたが、ほどなくボブ・シールと交替。そしてシールは、60年代に入り激動の時代を迎えたジャズ・シーンをリアルにとらえた作品を次々と手がけていく。その筆頭たるアーティストが、サックス奏者のジョン・コルトレーンだ。

当時、マイルス・デイヴィスのバンドから独立し、ソロ・アーティストとして人気実力ともにシーンのトップに登りつめていたコルトレーンと破格の条件で契約したインパルスは、『バラード』、『ジョニー・ハートマン・アンド・ジョン・コルトレーン』、『デューク・エリントン&ジョン・コルトレーン』といった企画アルバムから、60年代ジャズの金字塔である不滅の名作『至上の愛』、さらには集団即興によるフリー・ジャズ作品『アセンション』など、67年にコルトレーンが急逝するまで、その激しくも求道的な姿を克明に記録した。

ジョン・コルトレーン 至上の愛

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コルトレーンの死後もインパルスは、アルバート・アイラー、ファラオ・サンダース、アーチー・シェップなど、コルトレーンの後を継ぐフリー・ジャズを代表するサックス奏者の作品を録音。そのほかにも、ギル・エヴァンス、カウント・ベイシー、チャールス・ミンガス、マッコイ・タイナー、ソニー・ロリンズ、オリヴァー・ネルソン、ガトー・バルビエリ、キース・ジャレットなど数々の有名アーティストが各々の代表作をインパルスに残している。

アーチー・シェップ アッティカ・ブルース

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70年代後半に新録音を休止するが、87年に再開し、マイケル・ブレッカー、ダイアナ・クラールなどのヒット作を発表。現在も、宮本大を想起させる熱いプレイが魅力のサックス奏者シャバカ・ハッチングスや、ハープ奏者のブランディー・ヤンガーが在籍し、ジャズ・シーンに一石を投じ続けている。

BLUE GIANT MOMENTUM BLUE GIANT MOMENTUM

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