ジャズの歴史は、1940年代の大きな時代の転換期に折り曲がるようにふたつに分かれる。前半はクラシック・ジャズ、後半をモダン・ジャズと通常呼ぶが、急瞬、跳躍、逸脱、笑いをも含めた過激な躍動感で穏やかな旧世界に鋭い楔を打つように登場したのが、ビ・バップというジャズで、その立役者がチャーリー・パーカーとディジー・ガレスピーという二人の天才だった。彼らは共に素晴らしい楽器の名手とともに斬新な発想力の持ち主だが、面白いことにその性格は真逆と言っていいかもしれない。酒や麻薬に耽溺し、若くして亡くなったパーカーに対し、家庭人もしくは恐妻家のガレスピーは麻薬を嫌い、健全な生活を営み、その後も長く活躍し続けた。
彼らに違いは他にもあり、ファッションを気にしないにパーカーだが、ガレスピーは奇抜なかっこうを好み、その典型がトレード・マークの曲がったトランペットだ。パーカーは基本、小編成の演奏だが、ガレスピーはオーケストラが夢で、人々の注目を浴びるエンタテインメントに腐心した人と言える。後に大統領選に立候補したこともある。
この二人の共演の代表作『バード&ディズ』は、もう一人ビ・バップの高僧と言われる鬼才セロニアス・モンクが参加したセッションとしても必聴。もう一枚『ジャズ・アット・マッセイ・ホール』も二人の有名な共演作だが、こちらのピアノはバド・パウエルで、一堂に会したビ・バップの巨匠たちの記録として聴き逃せない。晩年のパーカーだが、まだまだ魅力十分。
『ナウ・ザ・タイム』は珍しいパーカーのワン・ホーン作。短距離走の超人と例えたいこの才能は、当時すでに100mを9秒で走ったような演奏家で、未だにこの上を行く演奏はないというところが、今も絶対の王者として君臨する所以だ。そんなパーカーだから、ストリングスとの共演『エイプリル・イン・パリ』は営業的作品と見なされることがあるが、実は生前パーカーが大切にした企画で、パーカーの音楽への本当の心が伝わる傑作でもある。

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