2025年の夏、aron! はEP『cozy you (and other nice songs)』を発表した。同作には表題曲を含む6曲が収められ、フランク・シナトラ、エラ・フィッツジェラルド、ジョン・メイヤーを想起させる彼のサウンドが見事に示されている。ヴィンテージな美学を宿しつつも、確かな現代性を併せ持つ本作は、彼の旋律作りの巧みさに加え、ギターとピアノにおける卓越した技巧を味わわせる作品となっている。

キャリア初期にありながら、aron! はすでに高い評価を獲得している。ロンドンの音楽系Webマガジン、The Line Of Best Fitは彼を「ジャズが生きているだけでなく、進化していることの証明である」と評し、彼が影響を受けたアーティスト、ジョン・メイヤー自身も、彼の作品を「これ以上ないほど素晴らしい」と称賛している。

アーロン!
アーロン!写真:アレクサンドリアピクチャーズ。

2025年に評価の高いEPをリリースしただけでは満足しなかったのか、aron! は勢いを緩めることなく、フランス人歌手ジョー・ラ・パニックとの魅力的なデュエット曲「deja vu」を発表し、さらに3曲入りのクリスマス作品『a cozy christmas』をリリースした。後者では、代表曲「cozy you」をクリスマス仕様に再構築し、ホーネン・フォードの美しいゲスト・ヴォーカルを加えている。さらに、クリスマスに愛する人々と離れて過ごすテーマを扱った新曲「mother i’ll be late」、そしてフランク・シナトラの名曲「mistletoe and holly」の華麗なカヴァーが収められている。

短期間で注目を集めてきたものの、aron! の飛躍は長年の学習と研鑽に支えられている。ノースカロライナ州シャーロット出身の彼は、両親を通じてレッド・ツェッペリンやパール・ジャムといったロックの象徴的存在に触れた。「ギターヒーロー」に熱中した末、8歳で本物のギターを弾き始めることとなった。

幼くして楽器を手にした彼は、地元の音楽学校でレッスンを受け、80代のジャズギター教師と出会う。この教師の存在は彼にとって決定的であり、音楽的な視野を大きく広げることになった。高校生になる頃には、ナット・キング・コールやフランク・シナトラの名曲を老人ホームで定期的に演奏するようになっていた。本人いわく「ちゃんと見えるように、蝶ネクタイとドレスシャツで決めていたよ」と笑いながら語っている。

その後、ノースカロライナ・スクール・オブ・アーツで古典作曲を学び、ラヴェル、バッハ、ショパンへの深い敬意を育んだ。さらに名門、マイアミ大学フロスト音楽校でジャズ・ヴォイスと映画音楽を専攻し、卒業している。

コロナ禍の時期にはピアノに専念し、毎朝早起きしてはピアノの隅々まで探求し、自分に何ができるのかを模索した。

幼少期から音楽に浸り、その後も絶えず研鑽を続けてきた結果、aron! は将来有望な存在となった。彼の魅力は、幅広く緻密なジャズの素養と、本人が「ヴィンテージ・ポップ・サウンド」と呼ぶスタイルの両方を兼ね備えている事だ。

時に弾むように明るく、時に心地良く、楽しく――aron! はクラシックでタイムレスな響きに現代的な彩りを与えている。11月にはシンガーソングライターのdodieと共にイギリスとヨーロッパを巡るツアーに参加し、その“cozy music” をさらに多くの人々へ届ける予定だ。

大きな躍進の一年を締めくくるにあたり、aron! の未来が明るいことは疑いようがない。多彩な影響を原動力とし、すでに多くの人々の心を掴んでいる彼は、2026年にデビュー・フル・アルバムをリリースする予定であり、音楽ファンの期待も高まるばかりだ。

aron! cozy you (and other nice songs)

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アンドリュー・テイラー=ドーソンは、エセックスを拠点とするライター兼マーケッター。UK Jazz News、The Quietus、Songlinesなどに記事を寄稿。音楽以外では、The Ecologist、Byline Timesなどにも寄稿している。


ヘッダー画像: aron!。写真: alexandriapictures。