今作『That Wasn’t A Dream』は、ブレイク・ミルズとピノ・パラディーノという2人の並外れたミュージシャンによる意志表明となっている。

グラミー賞受賞経験を持つパラディーノは、ディアンジェロ、ナイン・インチ・ネイルズ、エリカ・バドゥ、ジョン・メイヤーなど、様々なアーティストと共演し、ポピュラー・ミュージックにおけるベースのあり方を変革した。

一方、こちらもグラミー賞受賞経験を持ち、2度にわたってプロデューサー・オブ・ザ・イヤーにノミネートされたミルズは、アラバマ・シェイクス、ボブ・ディラン、フィオナ・アップル、パフューム・ジーニアスとの共演に加え、自身のソロ・アルバムでも知られる、今日最も人気の高いプロデューサー兼マルチ・インストゥルメンタリストの一人である。

Pitchfork誌は、このデュオの2021年のアルバム『Notes With Attachments』を

「リード・パフォーマーなど存在しない世界を想像する、最高のコラボレーターたちのサウンド」と評した。

『That Wasn’t A Dream』では、彼らはあらゆる階層構造をさらに解体し、即興的な楽曲に有機的で緻密にバランスのとれた内的論理を吹き込んでいる。静かに大胆に、常に進化し続ける彼らの音楽的化学反応をラディカルに展開した作品だ。

今作は、2018年からミルズが指揮を執る伝説的なスタジオ、サウンド・シティ・スタジオのスタジオAで、2ヶ月間にわたってレコーディングされた。これらのセッションには、新旧のコラボレーターが参加したが、中でも注目すべきはサム・ゲンデルである。彼は2021年のピノ・パラディーノ＆ブレイク・ミルズのアルバム『Notes With Attachments』全曲で演奏し、今作『That Wasn’t a Dream』のほぼすべてのトラックの仕上げを担当した。

最終的に、このアルバムはパラディーノとミルズの間にある核心的な関係がさらに深まった作品となっている。

『Notes With Attachments』が幾重にも重なる自発性から一体感を生み出すことを目指した作品だとすれば、『That Wasn’t a Dream』は抑制を通して一貫性を見出そうとしている。

パラディーノによると、

楽曲の中には、ハーモニーの緻密なアイデアから生まれたものもあり、後に必要最低限の要素へと削ぎ落とされたものがある。

一部の楽曲は和声的に密度の高いアイデアから始まり、後に最も基本的な要素まで簡素化されたという。

「本当に、もし最小限の要素で何かを機能させることができれば、空間が中心となることが明らかになった。」とパラディーノは語る。

また、それは革新のチャンスでもあった。パラディーノの初期のスケッチの一つ「What Is Wrong With You?」は、ミルズが新しい楽器、サスティナー内蔵のフレットレス・バリトン・ギターのプロトタイプを初めて試す機会となった。ミルズは2021年に弦楽器製作者のダンカン・プライスと協力してこのギターを開発し、それ以来、数多くの作品やジョニ・ミッチェルとのライヴ・パフォーマンスで使用している。

「フレットレス・サスティナーは、木管楽器、金管楽器、そして擦弦楽器を合わせたようなサウンドを生み出します。コントロールしたり定義したりするのが難しい楽器なんです。」

とミルズは語る。

この定義しがたいサウンドと、ミニマリズムへの遊び心のあるアプローチが、約3年後に行われることになるアルバムの残りの作曲とレコーディング・セッションの雰囲気を決定づけた。

その結果、『That Wasn’t A Dream』に収録された音楽は、一見親密な雰囲気から美しくも無秩序な音楽へと変化していく。じっくりと聴くほどに味わい深い音楽だ。破壊的でありながら自然主義的で、意図を持って混沌を操り、その過程で常に新たな美の形を解き明かしていく。

　　　

■リリース情報

ピノ・パラディーノ＆ブレイク・ミルズ　AL『That Wasn’t A Dream』
2025年8月22日リリース

収録曲目：
01.That Was A Dream
02. Contour
03. I Laugh In The Mouth Of The Lion
04. Somnambulista
05. Taka
06. What Is Wrong With You?
07. Heat Sink

---

_{ヘッダー画像： Photo © Justin Daashuur Hopkins & Luke Sargent}