過去10年に渡り、ロサンゼルスを拠点とするピアニスト兼プロデューサーのキーファーは、斬新で生命力溢れるジャズ・サウンドを切り拓いてきた。ディープなスウィング感を持つヒップホップのリズムを、直感的なジャズのインプロヴィゼーション、ソウルフルなオーケストレーション、そしてビートメイキング・カルチャーと同じ比重で取り込み、2017年のデビュー作『Kickinit Alone』以降に発表した3枚のアルバムによって、彼は自ら「オーバー・ザ・ブレイクス」と呼ぶ独自のサブ・ジャンルを築き上げた。

アンダーソン・パークやMndsgn(マインド・デザイン)といったカルト的人気を誇るR&B/オルタナティブ・ヒップホップ・アーティストとの演奏経験に加え、プロデューサーのカートゥーンズやシボとの継続的なコラボレーションを通じて、キーファーは、デイヴ・ブルーベックを始めとする1950年代ウェストコースト・ジャズの革新者たちが醸し出した悠然としたムードから、1990年代のGファンクの影響を受けたヒップホップ・サウンドに至るまで、この地域ならではのインストゥルメンタル音楽の系譜を一本の線で結ぶような、肩の力の抜けたウェストコースト・シーンを牽引してきた。その結果として、彼は実に魅力的で新鮮な音楽を生み出している。

最近ブルーノートと契約したキーファーは、現在、彼の「オーバー・ザ・ブレイクス」サウンドをさらに広げ、深める2枚の魅力的なアルバムを同時リリースしている。1枚は、カートゥーンズ、プロデューサーのケニー・ビーツ、ドラマーのネイト・スミスと共にFATHERSとして発表したデビュー・コラボレーション・アルバム、もう1枚は自身のソロ・アルバム『メモリー・ボム』だ。

どちらの作品においても、土の匂いを感じさせる地に足の着いたグルーヴが、キーファーの情感豊かに絡み合うメロディ・アレンジの核となっている。ダウンテンポからミッドテンポを基調としたセルフ・タイトル作『FATHERS』では、8曲の印象派的な楽曲が、「Patchwork」の躍動するファンク・リズムから、「Stub」のヒップホップ然としたブーム・バップ、「Pearl」のシンコペーションを効かせたラテン・グルーヴ、そして「Tomorrow, Again」の思わず首を振りたくなるソウルフルなフィーリングへと、実に滑らかに移り変わっていく。キーファーは全編を通じて、鋭く響くシンセや温もりあるローズ・ピアノを巧みに操りながら、そのリズムの土台に支えられると同時に、それをさらに引き立てている。「Patchwork」ではネイト・スミスのキック・ドラムと完璧に噛み合い、「Stub」では繊細な音色を加えることで楽曲に豊かな質感を与えている。

一方、『メモリー・ボム』に収録された13曲は、リズム・セクションとキーファーのメロディとの相乗効果をさらに押し広げ、より強固なものとしている。例えば、中毒性の高い「デイドリーミング(feat. シスコ・スワンク、ルーク・タイタス、リレー、カートゥーンズ)」では、シャッフルするハーフタイムのブレイクビートが、シンセ・パッドと幾重にも重なるピアノ・ハーモニーの下を軽やかに駆け抜ける。「オーヴァーチュア(feat. ネイト・スミス、シボ)」では、J・ディラを想起させるネイト・スミスのグルーヴがトップラインのシンセ・メロディと共に力強くスウィングし、「ゲット・トゥ・ザ・ムーン(feat. アンバー・ナヴラン、リレー、カートゥーンズ)」では、きらめくハーモニクスが疾走感溢れるファンク・ビートに軽やかさを添える。そして「ウォント・ビー・ロング(feat. アンバー・ナヴラン、フィル・ボードロー、シボ)」では、洗練された簡潔なフレージングが、ミニマルなクリック・リズムが息づくための絶妙な余白を生み出している。

Love Supreme 2026にて、ジェーン・コーンウェルと対談するキーファー

アンダーソン・パークの2019年作『ベンチュラ』への参加を始め、ダンス・フロア志向のプロデューサー、ケイトラナダや、ソウル・アーティストのモーゼス・サムニーとの仕事まで、幅広い実績を積み重ねてきたキーファー。だが、この2作品を通して最も際立っているのは、技巧をひけらかして楽曲を中断させるような誘惑に流されることなく、優れたバンドリーダーとして共演者たちの力を最大限に引き出す、その卓越した手腕である。

キーファー - メモリー・ボム

FATHERSでは、4人のメンバーが成熟した音楽的テレパシーとも言うべき強固なアンサンブルを聴かせる。「Figure 8」では、ゆっくりとうねるグルーヴにぴたりと息を合わせ、「Front Yard」では、オフビートのスタブを全員が一斉に決めることで、聴き手に思わず首を振らせる高揚感を生み出している。もちろん、それぞれのプレイヤーが存在感を放つ場面もある。「Pearl」ではネイト・スミスの複雑かつ躍動的なグルーヴが楽曲を牽引し、「The Leak」ではキーファーのハモンド・オルガンが鮮やかな彩りを添える。しかし、そのいずれもが自己主張のためではなく、楽曲全体の質感や空気感を高めるために機能している。

FATHERS - FATHERS

FATHERS FATHERS

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『メモリー・ボム』では、参加アーティストの顔ぶれはさらに多彩である。ムーンチャイルドのシンガー、アンバー・ナヴラン、サックス奏者でありブルーノート・アーティストでもあるウォルター・スミス三世、シンガーのレイ・カリル、ラッパーのエリック・ジ・アーキテクト、そして旧知のコラボレーターであるネイト・スミスやカートゥーンズらが名を連ねる。キーファーは楽曲を過度に詰め込むことなく、それぞれのゲストを的確に配し、存分に個性を発揮できる十分な余地を与えている。「ノーホエア・ファスト(feat. レイ・カリル)」では、レイ・カリルの独特なR&Bフィールのフレージングが、キーファーの物憂げなコードの上を軽やかに舞い、「メモリー・ボム(feat. ウォルター・スミス三世、フラナフィ、シボ)」では、ウォルター・スミス三世の胸を締めつけるように美しい重層的なハーモニーが哀愁に満ちたムードを形作る。「ゲット・トゥ・ザ・ムーン(feat. アンバー・ナヴラン)」では、ナヴランの息遣いを感じさせるヴォーカルがリード楽器のような役割を果たし、「ウォント・ビー・ロング(feat. アンバー・ナヴラン、フィル・ボードロー、シボ)」では夢見心地のサウンドスケープの中で、キーファーのピアノ・ハーモニーを映し鏡の様になぞっている。

プロデューサー、作曲家、バンドリーダー、そしてサイドマンという役割を自在に行き来するキーファーは、『FATHERS』と『メモリー・ボム』によって、その輝かしく、なお進化を続けるキャリアに新たな章を刻んだ。「オーバー・ザ・ブレイクス」という独自のサウンドに更なる精緻な表現を与え続けながら、新旧のコラボレーターを結集し、この魅力溢れるウェストコーストの音楽的感性を真にグローバルなものへと押し広げている。その可能性は、空でさえ限界とは言えないほどである。


アマール・カリアは作家でありミュージシャン。ガーディアン紙のグローバル・ミュージック・クリティックを務め、Observer、Downbeat、Jazzwiseなどの媒体に寄稿している。デビュー小説『A Person Is A Prayer』が発売中。


写真:ブランドン・モスケラ © ブルーノート・レコード