ランディ・ブレッカーとマイケル・ブレッカー、キャノンボール・アダレイとナット・アダレイ、マーシャル・ロイヤルとアーニー・ロイヤル、エミール・マンゲルスドルフとアルバート・マンゲルスドルフ・・・ジャズの歴史を彩ってきた管楽器兄弟は決して少なくない。そして、今の日本ジャズ・シーンにはトランペット奏者の岡崎好朗とサックス奏者の岡崎正典がいる。

Okazaki Brothers
『Blood But Blues』

Okazaki Brothers Blood But Blues

Available to purchase from our US store.
購入

有数のビッグ・バンド“小曽根真 No Name Horses”の結成時からのメンバーでもあるふたりが、小曽根が立ち上げた新レーベル「Mo-Zone」からOkazaki Brothers名義による初の双頭リーダー・アルバム『Blood But Blues』を発表した。会心作のリリースを間近に控えたタイミングのふたりに話を聞いた。(Y=岡崎好朗、M=岡崎正典)

「トランペットを始めたのは12歳の時ですが、中学校の部活は水泳部でした。ジャズのトランペットに関心を持ったのは、14歳の時にテレビで放送されていた映画『ベニー・グッドマン物語』でハリー・ジェームスを見てからです。1980年代後半は地上波でジャズの番組がたくさん放送されていたので、「マウント・フジ・ジャズ・フェスティヴァル」や「セレクト・ライヴ・アンダー・ザ・スカイ」等のライヴ番組も録画して見ていました。フレディ・ハバード、ウディ・ショウ等が活躍していた頃です」(Y)

「僕は高校で吹奏楽部に入りました。第一希望はオーボエでしたが、結果的にクラリネットを担当することになりました。部活で演奏していたのは吹奏楽用にアレンジされたクラシックが主で、ジャズと言える曲は「シング・シング・シング」くらいでしたね。大学のビッグ・バンドではウッド・ベースかギターを弾きたかったんですが、教えてくれる先輩もいなかったですし、クラリネットと同じBフラットのキーであるテナー・サックスを演奏するようになりました。ジャズを面白いと思ったのは、そのビッグ・バンドでカウント・ベイシー等の曲を演奏するようになってからです」(M)

レコーディング写真 岡崎好朗 Photo ©noriyukisoga

    

自分たちの考えるジャズを表現

時期は異なるものの共にボストンのバークリー音楽大学で学び、帰国後は日本ジャズ界のファースト・コールとなった。『Blood But Blues』は言わば、兄弟の愛する、信じる、考えるジャズの姿が注ぎ込まれた自作集だ。

「全曲オリジナルにしたのは、とにかく僕らの書いた曲をレコーディングしたいというプロデューサーの小曽根さんの意向もあります。ライヴで演奏したことがあるのは、僕個人のバンドでとりあげた「Dream Hunter」だけ。それ以外はレコーディング用に書きました。5人で演奏するのは結構バランスが難しいと僕は思っています。全員がソロをとると必ず長くなってしまいますので、どの曲で誰がどのオーダー(順番)でソロをとるかも考えました。ひとつの理想の形は、往年のホレス・シルヴァー・クインテットです。彼らもライヴでは一曲をけっこう長く演奏していますが、アルバムは曲数が多くて、きっちりとした形式美のようなものがあります」(Y)

「形式的なことも曲を書くときには大事なのかなと思います。シルヴァーにしても2管のアレンジが計算されて、ちゃんとすごく細かく作られていますよね。今回のレコーディングに関しては、まずその場で演奏してみて、バランスを考えてからソロのオーダーを決めていきました。作曲している段階ではまだ(ソロの順番が)決まっていませんから」(M)

「作曲に関しては、最初はトランペットで始めます。ピアノでコード(和音)をつけながら作る方法ではなくて、メロディをある程度書いてからコードをつけていきます。アドリブをどうするか等を考えるのは後の問題で、まずメロディ重視です」(Y)

「僕はキーボードで作曲します。それを後日、見返して、アレンジャーになったつもりで直していきます。そのうち楽曲の形ができてきて、日を変えてまた見直していくやり方ですね」(M)

レコーディング写真 岡崎正典 Photo ©noriyukisoga

    

兄弟による多彩なオリジナル曲

テイストが異なるので共作はしたことがない、という。「Long Way Home」は岡崎好朗、「Awkward Beauty」は岡崎正典のそれぞれワン・ホーン編成による自作自演だ。

「今回のアルバムにバラードが欲しいと思って、いちばん最後に書いたのが「Long Way Home」でした。とにかくシンプルにしたいということで書いていきましたが、どのコードをつけるのかに関しては苦労しました。一番気に入っているオリジナルのひとつです」(Y)

「スタンダード・ナンバーの『ビューティフル・ラヴ』をいろいろアレンジしているうちに、どんどんそこからかけ離れていっていった感じですね。マイナー(短調)というところだけが残った感じです」(M)

ほかにも、敬愛するドラマー/作曲家のラルフ・ピーターソンに捧げた「Ralph Peterson」、“軒先のツバメを見たら幸せになる”という言い伝えからヒントを得た「L’Hirondelle」、ビデオゲーム・シリーズ“ゼルダの伝説”にインスパイアされた「Theme For Z」、エジンバラの印象を基にした「The Dragon Flies」、曲のフォーム(小節数)をタイトルにした「10-6-12」等、興味深いオリジナル群が揃う。

     

No Name Horsesの仲間が集結

共演メンバーには、小曽根真(p)、小川晋平(b)、高橋信之介(ds)と、“No Name Horses”の仲間がそのまま参加した。

「僕は、“伴奏の美学”を持っていないピアニストが割と多いような気がしています。コンピングに隙があると、演奏が格段につまらなくなるというか緊張感がなくなってしまうんです。小曽根さんはまったく違って、伴奏する時に、その人(ソリスト)がどうやりたいのかを予測して、的確なコンピングをしてくれます。とにかくソリストの音をよく聴いてくれるんです」(M)

「小曽根さんはジョン・ヘンドリックスのバンド等でも活動した“伴奏の名人”ですからね。ゲイリー・バートンの許での経験もあるのでしょう、自分を入れながらも出しゃばらない、そのバランスがめちゃくちゃうまいです」(Y)

「晋平は安定感がすごいし、ベースの音色も太い。信之介の音色も、ブラシを始めとしてすごくいい。リズム・セクションは小曽根さんがピックアップしましたが、ものすごくいい組み合わせだと思います」(M)

Photo ©noriyukisoga

     

50年代・60年代の香り漂うサウンド

“最新作では、自分の好きなサウンドを録音できた”と、兄弟は口を揃える。

「僕がジャズを始めた頃は、アントニオ・ハートだったり、ちょっと上の世代だとジョシュア・レッドマンやマーク・ターナー等、アコースティックなストレート・アヘッドを志向する若手が出てきた時期です。そこには50年代、60年代の香りも含まれています。彼らの演奏は今も自分の好みです」(M)

「僕もいい歳ですし、難しいことをもっと上手にできる若手はいっぱいいるでしょう。だからそういう人たちが逆にできないようなものをやろうと思って(笑)、曲を書いたつもりです。“時代に流されない”というとちょっと言いすぎだけど、とにかく自分の好きなジャズを演奏しました」(Y)

4月からはリリース記念のツアーも始まる。ジャズの普遍を届けるOkazaki Brothersの活躍をアルバムとライヴの双方で味わっていただきたい。

    

Okazaki Brothers
『Blood But Blues』

Okazaki Brothers Blood But Blues

Available to purchase from our US store.
購入

【収録曲】
01. Gotta Decent Shoes?
02. The Dragon Flies
03. 10-6-12
04. The Sun Set Over The Horizon
05. Theme For Z
06. L’Hirondelle
07. Great Cold
08. Sheriff
09. Long Way Home
10. Ralph Peterson
11. Awkward Beauty
12. Dream Hunter

岡崎好朗: trumpet
岡崎正典: tenor saxophone, clarinet
小曽根真: piano
小川晋平: bass
高橋信之介: drums

★2024年10月14日、15日、東京、ラボレコーダーズにて録音
Produced by 小曽根真

    

【ライヴ情報】

『Blood But Blues』発売記念ライヴ
2026年4月7日(火) 新宿・ピットイン
2026年4月9日(木) お茶の水・NARU
2026年4月16日(木) 渋谷・ボディ&ソウル
2026年6月10日(水) 丸の内・コットンクラブ
etc.

<メンバー>
岡崎好朗(tp), 岡崎正典(ts, cl), 平手裕紀(p) on 4/7, 9, 16
小曽根真(p) on 6/10, 小川晋平(b), 高橋信之介(ds)


ヘッダー画像:Photo ©Takumi Saitoh