じっと座って――きっとそうしたくなる――耳を傾けてほしい。これほど親密で真摯、豊かで澄んだ声に耳を開けば、その声が紡ぐ物語はまるで自分だけに語りかけられているかのように感じられる。愛、天国、雨粒の物語。夜、魔法、そして悪魔的な営みの物語。往年の偉大なディーヴァたちと同じく、ガブリエル・カヴァッサの歌声は聴く者を引き込み、世界を呼び起こす。そして今、ブルーノートでのデビュー作『ディアヴォラ』──インスピレーション溢れるカバー曲と、スタンダードのような輝きを放つオリジナル曲を収めたアルバム──をもって、彼女はジャズの殿堂にその名を刻もうとしている。「ガブリエルの歌を聴くことは、彼女に耳元で秘密をささやかれるようなものだ」と語るのは、ブルーノートの社長ドン・ウォズである。彼は、カヴァッサの盟友であり伝説的なサックス奏者兼作曲家のジョシュア・レッドマンと共に『ディアヴォラ』を共同プロデュースした。「彼女は今後数十年に渡って、音楽界に大きな存在感を示し続けるだろう」
ガブリエル・カヴァッサ ディアヴォラ
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カリフォルニア州サンディエゴに生まれ育ち、ニューオリンズで音楽的素養を深めたカヴァッサは、雰囲気を醸し出すスタイルで長らく高い評価を得てきた。そのスタイルはテンポを自在に操り、歌詞の内側へと深く潜り込み、楽器的な表現へと身を委ねるものである。しかし彼女の知名度を一気に押し上げたのは、レッドマンの2023年の話題作、ブルーノートからリリースされたアルバム『ホエア・アー・ウィー』でのコラボレーションだった。批評家たちの賞賛は惜しみないものだった。「彼女の声は肌の奥まで染み込んでくる」とStereophile誌(米ハイエンド・オーディオ専門誌)は表現し、「深く豊かで、どこか儚い声を持つ若きシンガー。スターの誕生だ」とDownBeat誌は明言した。そのコラボレーションはレッドマンの最新作『ワーズ・フォール・ショート』でも実現した。
ジョシュア・レッドマン ワーズ・フォール・ショート
Available to purchase from our US store.彼女の躍進は必然であり、まるで運命づけられていたかのようでもある。レッドマンのマネージャーがたまたまニューオリンズで結婚式に出席し、そこでカヴァッサがたまたま歌を披露していた。マネージャーはすっかり魅了されてしまった。イタリア系アメリカ人のカヴァッサがビッグ・イージー(アメリカ・ルイジアナ州ニューオリンズの愛称)に移り住んだのは2017年のこと。技を磨き、夢を追うという確固たる意志を胸に抱いてのことだった。
「ニューオリンズは今や私の故郷よ」と彼女は言う。ジェンティリー地区にある、光に満ちた風通しのよい書斎に座りながら。「休暇で訪れて、たちまち恋に落ちてしまったの。以前はニューヨークに落ち着くものだと思っていたし、今もしょっちゅう演奏しに行くのだけど、ニューオリンズには全く違う視点から学べることがたくさんあると直感したの。ここの人たちはとても寛大で、アーティストを受け入れる力が素晴らしい。この街が私を大きく成長させてくれたわ」
学校の合唱団やタレントショーを経てサンフランシスコ州立大学を卒業した彼女は(ジャズ史を専攻とした音楽学の学士号を取得)、ビリー・ホリデイやエラ・フィッツジェラルドからロバート・グラスパー、セシル・マクロリン・サルヴァントまで幅広い影響を受けており、すでに確かな実績を積み上げていた。ニューオリンズのフレンチ・クォーターにある老舗ラウンジ、スターライト・ラウンジをはじめとする会場でバンドとギグを重ね、2020年にデビュー・アルバム『Gabrielle Cavassa』をリリース——さらに2021年のサラ・ヴォーン・インターナショナル・ジャズ・ヴォーカル・コンペティションで優勝を果たしていた——そんな折、レッドマンのスタジオ・セッションへの参加を打診され、その後ツアーにも同行することになったのである。「ガブリエルはまさに驚異的なヴォーカリストだよ」と、初めて客演シンガーを迎えたレッドマンはEverything Jazzに語っている。

シンデレラ・ストーリー、彼女自身そう呼んでいる。そしてそれは、人生の抜本的な変化でもあった。「サイドマンとして、あのレベルのツアーに参加できるというのはシンガーにとって本当に稀な機会だったわ。真の通過儀礼と言えるものね。ジョシュアはこのプロセス全体を通じて、素晴らしい道案内をしてくれたわ。コラボレーターとしてだけでなく、音楽ビジネスをどう切り抜けるか、物事をどうまとめ上げるかを知っている人間として」
さて、『ディアヴォラ』である。ピアニストのポール・コーニッシュ、ギタリストのジェフ・パーカー、ベースにラリー・グレナディア、ドラムにブライアン・ブレイドという、まさに夢のようなミュージシャンたちが集結し、レッドマンがテナー・サックスでゲスト参加したアルバムだ。「ドンから理想のバンドを訊かれたの。じっくり考えて、ジョシュアにも相談したら、ジェフたちを勧めてくれて、みんなが私に最高の贈り物をしてくれたわ」そう言って彼女は微笑む。「以前はインディペンデント・アーティストだったことを思うと、夢のような話よ」
そしてこれは、カヴァッサの才能が試される並外れた舞台でもある。彼女はその才能を10曲に渡って披露し、バンドリーダーとしての手腕、恐れを知らない楽曲解釈、そして詩的な叙情性と真摯な誠実さに恵まれたソングライターとしての資質を鮮やかに示している。
「最初はスタンダード・アルバムを作るつもりで始めたんだけど、どんどん曲をカットしていったの」とカヴァッサは言う。彼女は大きな青いディアンジェリコ・ギターで作曲し、自身が知るものを引き出しながら、直感に従い、湧き出てくるアイデアを信じる。アルバムの物語——天使と悪魔が共存し、服従と支配、静寂と切迫感の間で絶えず引き合う物語——を紡ぎ上げたのも、そうした姿勢からである。
これはすなわち、カヴァッサ自身の物語だ。このダイナミズムは、芸術的にも個人的にも、彼女という存在の核心にある。「どちらも手放せずにいるわ。このアルバムは、こうした極端な感情がしばしば、否定的な姿で見られることへの受け入れがたさから生じているという事実を認めようとしているのよ。特に、かつて神聖な女神のように崇められた立場から落ちた後はなおさら。転落しても人間になるわけじゃない、最低の存在に成り下がるのよ」
彼女は一瞬言葉を止め、ため息をついた。「個人的な部分では、その転落によって傷つき、完璧なイメージに戻りたかった。でもそれも現実的じゃない。それに気づくのは大きな安堵でもあるのよ」アルバムはパーカーの「ヘヴン・サイズ」で幕を開ける。心を揺さぶるメロディックなサウンドスケープで、バート・バカラックの「雨にぬれても」の豊かな再解釈へと流れ込む。アルペジオのコードとブレイドの脱力感のあるグルーヴが、このクラシックにさらなる親密さを与えている。ビリー・エクスタインのスタンダード「プリズナー・オブ・ラヴ」は、トラディショナルとモダンが溶け合う魅力でスウィングする(「私は常に前を向くようにしていて、現代性は大切にしているの。でも本当のことを言えば、やはり伝統から来ているのよ。そういう曲を歌うのが本当に好きで」)
もうひとつのオリジナル曲「ボシー・ノヴァ」は、ブラジルのリズムを基調に、犠牲についてセピア色に染まった思索を紡ぐ。「トゥ・セイ・グッバイ」では雰囲気を一変させ、甘美な世界からより暗く、より燃えるような世界へと聴き手を誘う。「ドンがアルバムを構成した手法が素晴らしかったわ」とカヴァッサは語る。「軽やかで喜びに満ちた世界からゆっくりと移り変わり、やがて力強いディアヴォラの精神へと沈んで行くの」
ルイジ・テンコの「アンジェロ」は原語のイタリア語で歌われ、操る者の心を探る(「冗談で言ったんだ 君を去るかもしれないって/ただ君を泣かせる楽しみのために」)。一方、カヴァッサ作の「ディアヴォラ」は、堕天し、傷つきながらも輝きを放ちながら女悪魔へと成り変わる天使を召喚する。あるいは少なくとも、情熱を知る存在を。燃え盛る存在を。
「アルバム全体がディアヴォラを映し出しているの」とカヴァッサは言う。彼女の息遣いを感じさせる瞑想的な「ビー・マイ・ラヴ」は、後半の楽曲群の間に、幕間の口直しとして配置されている。「彼女はひとつのキャラクターであると同時に、この二つの相反する部分を内包するアイデアでもあるの。このコンセプトについて話すのはなかなか難しいわ」と彼女は続ける。「音楽的に言えば、怒りや憤りを抑え込まずにすべて解き放ったとき何が起きるかを探求したものよ。この自己省察は苦しいものだったけど、同時に自分にとって大きな意味を持つものでもあったわ」
ガブリエル・カヴァッサ ディアヴォラ
Available to purchase from our US store.耳を澄ませば、聴こえてくるはずだ。バリー・マニロウの「クッド・イット・ビー・マジック」は、レッドマンの黄金色のテナー・ソロに支えられた夢幻的な抑制の中に新たな命を吹き込まれている。アルバムの掉尾を飾る哀愁漂う「別れの夜」は、失われた愛を断ち切れた糸と指の間からこぼれ落ちる砂に喩えたイタリアのバラードであり、カヴァッサの声とコーニッシュのピアノが織り成す、繊細な対話として奏でられる。「これは悲しみへの承認であり、穏やかな希望の表明なの。『神が決めるそのときに、新しい日が訪れ、かつて共に住んだ空の家に光が満ちるだろう』と歌っているの。人生の次の章へと踏み出すことについての歌なのよ」カヴァッサは、まさに現代のためのシンガーであり、ストーリーテラーなのである。
ジェーン・コーンウェルはオーストラリア出身、ロンドン在住のライター。芸術、旅行、音楽を専門とし、『Songlines』や『Jazzwise』をはじめ、イギリスおよびオーストラリアの各種出版物やプラットフォームに寄稿している。ロンドン・イブニング・スタンダード紙の元ジャズ評論家でもある。
ヘッダー画像:ガブリエル・カヴァッサ。写真:ローグ・コーエン。
