どう見ても、2024年はブルーノートにとって大きな節目の年だった。伝説的なレーベルは創立85周年を迎え、ジャズを象徴する唯一無二の存在としての役割を改めて確固たるものにした。ブルーノートは、音楽史を通じて最も愛され、最も長く聴き継がれてきたアーティストとレコーディングの数々を有する、永遠に切り離せない存在である。しかし同時に、この周年は、ブルーノートがいわゆる黄金時代の遺物などでは決してなかったことを証明する機会にもなった。記念プロジェクトの一環として、現代ブルーノートのレコーディング・アーティストによるオールスター・グループが結成され、レーベルが常に支持してきた鮮やかで現代的なエネルギーが提示されたのである。

当初、ザ・ブルーノート・クインテットの名で集結したこのグループには、近年のブルーノート作品で既に眩い存在感を示していた面々が揃った。ピアニスト(兼ミュージカル・ディレクター)のジェラルド・クレイトン、アルト・サックスのイマニュエル・ウィルキンス、ヴィブラフォンのジョエル・ロス、ドラマーのケンドリック・スコット、そしてベーシストのマット・ブリューワーである。結成当初から、彼らの間には強い共鳴があった。ウィルキンスはこう語っている。「ジョエルとは、過去9年をかけて深い音楽的繋がりを築いて来たし、僕たちは皆、それぞれ異なるバンドで活躍するジェラルド、マット、ケンドリックの音を聴いて育ってきたんだ」

Out Of/Into - Motion II

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2024年1月、クインテットは35公演に及ぶ野心的な全米ツアーに乗り出し、斬新でオリジナルな楽曲を演奏した。長年のツアーの成果は、バンドに大きな変革をもたらした。クレイトンはこう回想する。「毎晩、互いに切磋琢磨し、さらに遠くへ、さらに深く掘り下げていった。2ヶ月の間に、音楽はあらゆる方向に広がっていった」

音楽が活気づくにつれ、5人組はツアーの合間に時間を割いてスタジオに入り、自分たちが発見したサウンドを記録していった。そして、この記念すべき年の終わりに、彼らはセッションで録音された7曲のオリジナル曲を収録したアルバム「Motion I」をリリースした。彼らがグループのために選んだ新しいバンド名「Out Of / Into」は、紛れもない意志表示であり、ブルーノートの素晴らしい遺産を称えつつ、探求心に満ちた創造性で前進するという強い意志を凝縮したものだった。「Out Of / Intoは、ブルーノートの歴史、そして私たちのサウンドの進化を反映しているんだ」とスコットは語った。

写真: ライアン・マクナーニー、ブルーノート・レコード提供。

デビュー・アルバムは成功を収め、アウト・オブ・イントゥは第2弾となる『Motion II』を今月発表した。本作には、2024年のスタジオ・セッションで録音された6曲の見事なオリジナル楽曲が収められている。前作同様、1960年代半ば、ジョー・チェンバース、ボビー・ハッチャーソン、アンドリュー・ヒル、ジョー・ヘンダーソンといったブルーノートのアーティストたちが、ポスト・バップを新たな領域へと押し広げていた、きわめて肥沃な時代の美学を意識的に汲み取りつつ、それを21世紀的な感性で大胆に刷新してみせている。

アルバムは、ウィルキンス作曲の「Brothers In Arms」で幕を開ける。変拍子が次々と入れ替わる、確信に満ちた洗練されたテーマを提示した後、サックス、ピアノ、ヴィブラフォンが短く簡潔なソロを順に繰り広げる。3巡のソロが終わると、エレクトリック・ピアノの哀愁を帯びたコードと、静かなベース・ソロによって一息つくような再集合が行われ、続いてテーマがゆるやかに、優雅な姿勢で再提示される。サックスの探求的な語り口に導かれ、曲は壮大でありながら郷愁を湛えたクライマックスへと向かう。これは、ジャズの曲構造がいかに組み立てられ得るかを遊ぶ様に探り、再想像する試みである。

クレイトンの「Finding Ways」もまた興味深い音楽的構造を見せる。ホーンとヴィブラフォンのユニゾンによるテーマが和声の梯子を上昇し、軽やかなドラムのクリック音、そこにピアノとベースが支柱のように組み込まれて行く。ここでもソロは短く鋭い。全体が5分に満たないこの曲は、自己顕示に陥る余地を排し、徹底してアンサンブルの力を前面に出す、節度ある美学の体現となっている。

ベーシスト、ブリューワーによる「Juno」は、ベースのソロ独奏で幕を開け、新しい形のバラードを提示する。ため息のように繊細で、広く開けた空間の感覚の中に、液体的な情感の波が次々と押し寄せる曲である。クレイトンの「Familiar Route」もまた気品を湛えた一曲だ。ハービー・ハンコックが1965年にブルーノートから発表した名作『処女航海』を思わせる和声構造を持ち、リムショットのリズムが穏やかでありながら止めどない推進力を与える。その上を、エレクトリック・ピアノが丁寧に配置された探求的な響きと共にさざ波のように流れて行く。

続くスコット作曲の「The Catalyst」は、ドラマーの見せ場に相応しい1曲である。いたずらっぽくズレた4/4のリムショットが、落ち着かないシンコペーションを暗示しつつ、拍が落ちると、揺れ動く挑発的なグルーヴが立ち上がる。ファンクを予感させながらもどこか抑制され、1拍目や3拍目を分かりやすく強調するようなことは決してしない。渦を巻くようなピアノ・ソロが空気をほぐすにつれ、スコットは拍の周囲を巧みに泳ぎ、やがてグループはライヴ演奏さながらの完璧なフェードアウトを実現し、心臓の鼓動のようなキックだけを残して幕を閉じる。

ラストを飾るのは、クレイトン作曲の「Nacho Supreme」である。この曲は、1960年代半ばのブルーノート・サウンドへの債務を、クインテットが最も明確に認めている1曲だ。軽やかでありながら引き締まったスピード感を持ち、不意に立ち上がるスタッカートや停止の瞬間が緊張感をもたらすヘッドから、シームレスにアップテンポのスウィングへと移行し、ベースは勢いよくウォーキングし、ドラムは前へと押し進める。ウィルキンスのサックス・ソロは流麗で表現豊か、ロスはボビー・ハッチャーソンを彷彿とさせる、しなやかでありながら芯のあるヴィブラフォン・ソロを披露し、クレイトンのピアノは疾走しながらも探求的である。最後には循環するフレーズが繰り返され、スコットが豪放なドラム・ソロで燃え上がる。

伝統に深く根差しながら、絶えず新たな形式を探し求める『Motion II』は、解き放たれた創造性が脈動する心臓部を持つ、まさに渾身の一作である。ロスが簡潔に述べたように、「ブルーノートのレガシーを継続させる唯一の方法は、ためらうことなく自分たち自身に忠実であり続けることなんだ」

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ダニエル・スパイサーは、ブライトンを拠点とするライター、パーソナリティ、詩人。The Wire、Jazzwise、Songlines、The Quietusなどに寄稿している。ドイツのフリージャズ界の伝説的存在であるペーター・ブロッツマンとトルコのサイケデリック音楽に関する著作を上梓。


ヘッダー画像:Out Of/Into。撮影:Ryan McNurney。