ステラ・コールは、グレート・アメリカン・ソングブックの名曲を現代的に再解釈することで聴衆を魅了してきたシンガーである。ハリウッドのミュージカル映画とノラ・ジョーンズのレコードを聴いて育ったイリノイ州出身の彼女は、ロックやポップスの楽曲をジャジーにカバーした動画によって、SNSで瞬く間に話題となった。Deccaと契約したばかりの彼女の3rdアルバム『It’s Magic』は、高い評価を集めている。現在、コールはアメリカとヨーロッパ各地で公演を行っている。Everything Jazzは、ロンドン公演を控えた彼女にインタビューを敢行した。

Everything Jazz: Deccaという伝説的なレーベルと契約した心境は?

ステラ・コール:本当に信じられないわ。夢が叶った!という感じ。私はDecca Verveレーベル・グループのレコードをたくさん聴いて育ったの。特にジュディ・ガーランドがDeccaに遺したレコーディングは私にとってバイブルみたいなものよ。今回のレコードでは、チームがこれまで自分では実現できなかった形で私のヴィジョンを美しく具現化してくれたわ。みんなに、私たちが取り組んできたことをもっと見てもらうのが待ちきれないわ。

Everything Jazz: 本番前のルーティンはありますか?

ステラ・コール:正直に白状すると、私は直前になって準備を始めるタイプなの。それがアドレナリンになるというか「どうしよう!髪をセットするのに時間、間に合う!?」みたいな。でも日頃から、瞑想、ヨガ、ストレッチを行っているわ。その後、発声練習をして、水をたくさん飲むの。これが日々のルーティンかな。

Stella Cole

ステラ・コール It's Magic

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Everything Jazz: スタンダード曲を歌うことで、オーディエンスとの繋がりはどう感じますか?

ステラ・コール:公演が終わった後、多くの人が私の所へ来てくれるの。お母さん、娘さん、おじいちゃん、おばあちゃん…様々な人たちよ。私が歌った曲について、それぞれに全く異なる思い出や結びつきを持っているの。例えば「Somewhere Over the Rainbow」。この曲はほとんどのコンサートで最後に歌う曲なの。こういう誰もが知っているスタンダード・ソングは、聴く人にとって特別な感情的価値があると思うわ。初めて聴く曲以上に、深い情緒的な重みを帯びているのよね。

Everything Jazz: グレート・アメリカン・ソングブックの中で、特に歌うのが好きな曲は?

ステラ・コール:『サウンド・オブ・ミュージック』からの「Something Good」。偉大なロジャース&ハマースタインの作品よ。歌うといつも会場全体がすっと静まる瞬間があって、それが魔法のような感覚なの。もう1つは「Till There Was You」。とてもロマンチックで、繊細な時間が流れるわ。そして3つ目は「Perhaps, Perhaps, Perhaps」という、少しとぼけた感じの曲。お客さんがいつも一緒にささやくように歌ってくれて、それが本当に楽しいの。
この3曲は良いバランスだと思うわ。親密なバラードと、馬鹿げたドリス・デイ風の空気感って感じで。

ステラ・コール
ステラ・コール。写真:ルーク・ロジャース。

Everything Jazz: みんなが知るべき、過小評価されているアーティストは誰?

ステラ・コール:最近、アニタ・オデイを良く聴いているの。当時の彼女は決して過小評価されてはいないけれど、現在はジャズ界の外では知名度が下がっているように思うの。とにかく卓越していて、非現実的なほど素晴らしいアーティストよ。彼女は今日よく知られているジャズの大物たちと同じレベルで語られるべき存在だと思うわ。

Everything Jazz: 一緒にコラボしたい現役のアーティストはいる?

ステラ・コール:マイケル・ブーブレの名前はよく挙がるわね。確かに楽しそうよね。サマラ・ジョイやレイヴェイも大好きよ。私たち3人で女子ジャズ・トリオみたいなことができたら楽しそうって思うの。それから、現代のアーティストが昔の歌手とのデュエット風に仕立てる企画も好き。ビング・クロスビーがフランク・シナトラとデュエットした作品みたいな。ただ、あの声と並んで歌うとなると、正直、恐れ多いけど。

Everything Jazz: あなたにとってのクリスマス・サウンドトラックは?

ステラ・コール: ビング・クロスビーとローズマリー・クルーニーによる『ホワイト・クリスマス』のサウンドトラック全編、それからフランク・シナトラ、エラ・フィッツジェラルド、ジュディ・ガーランドね。クリスマス音楽はとにかく私を笑顔にしてくれる。一年中クリスマス・サウンドトラックが流れていてほしいくらいよ。

Everything Jazz: 今年のクリスマスに欲しいものは何?

ステラ・コール:私の夢のプレゼントは、雪山にあるキャビンでの休暇!木造の小屋で、暖炉があって、レコードプレーヤーがあるの。携帯は圏外で、誰も私に連絡できない。犬がいてくれたら最高!犬は大好きなの。近くでスキーをするのも良いし、お茶とレコードを楽しみながらのんびりするのも良いわね。今年はたくさん旅をして素晴らしい街を巡って来たけれど、完璧なプレゼントというのは、雪の中で1週間、平穏と静けさと安らぎを楽しみながら過ごす事。これ、誰か私の彼氏にメールしてくれないかな。笑

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ステラ・コール 2026年来日公演予定
2026年2月27日(金)~28日(土) ブルーノート東京
2/27(金) [1st]Open5:00pm Start6:00pm [2nd]Open7:45pm Start8:30pm
2/28(土) [1st]Open3:30pm Start4:30pm [2nd]Open6:30pm Start7:30pm
メンバー:ステラ・コール(vo) マイケル・ケイナン(p) マイケル・ミリオーレ(b) ハンク・アレン・バーフィールド(ds)
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/stella-cole/

ヘッダー画像:ステラ・コール。写真:ルーク・ロジャース。